医療と食マーケティングと塩分濃度の関係(2/3 ページ)
2014年度、日本の医療費が40兆円を超えた。このままでは団塊の世代が後期高齢者となる2025年度以降に、国家財政が医療費で破たんしかねない。ここにビジネスチャンスがある。
企業に対してペナルティが課されるケースも
塩分を過剰摂取すると高血圧を発症しやすくなる。だからといって、食事の際に塩分を控えめにしましょうと訴えかけたとしても、実はあまり効果はない。これは米国の数字だが、塩分摂取の77%は加工品と外食によるものだからだ。つまり、家庭での食事で塩を振らないよう意識しても、それで減らせる塩分量はしれているのだ。
そこでCDC(=アメリカ疾病予防管理センター)は、塩分摂取に関して企業に対して協力を求め、Salt Reduction Community Programを始めた。
CDCが進めるプロジェクトでは、スターバックスやサブウェイなどファストフードチェーンと共同で、店頭で提供する食品に含まれる食塩量を2012年から2015年の3年間で2割減らす。これにより外食をする人は、何も意識することなく減塩できることになる。
こうした国を挙げての取り組みは、1972年にフィンランドで始まっている。同国では、過去30年にわたって加工食品に含まれる塩分量を最大25%削減した結果、平均塩分摂取量が40%下がり、高血圧や心疾患にかかる人の割合が減少している。
産官連携による取り組みは大きな注目を集めており、今後、導入する公的機関が増える可能性がある。将来的には、協力しない企業に対してペナルティが課せられることも考えられる。
塩分を抑えて、おいしくできれば勝てる
塩分に対する嗜好性は、人の進化の過程で形成されてきたものであり、塩辛いものに対しておいしさを感じるのは、人間の性である。そのために、普通に食事をする上で意識的に塩分を押さえることは難しい。
逆に考えれば、ここにビジネスチャンスがある。つまり、塩分を控えながら、塩分が含まれていた場合と同じようなおいしさを提供できる新しい調味料なり料理法なりを開発すれば良いのだ。
例えば、ユネスコの無形文化遺産となった京都の和食が参考になる。だしをしっかりと取れば、だしのうま味があるために、塩分を控えても十分においしい料理を作ることができる。もちろん、京都の一流料亭と同じように、高級なわかめや昆布をぜいたくに使ったのでは採算が合わない。
けれども、うまみの成分は科学的に解明されているのだから、コストを抑え、塩分も控えたおいしい料理を作ることは可能だろう。ニューヨークでは、四川料理の麻辣(まーらー)フレーバーを活用することで、減塩とおいしさの両立に成功した例が報告されている。
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