アリさんマークの引越社が「恫喝映像」をネットに流されてしまった理由:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
アリさんマークの引越社と訴訟中の社員が加入しているプレカリアートユニオンが、ネットにあげた映像が話題になった。引越社の幹部が恫喝しているので、ネット上では「酷い会社だ」などと批判されているが、そもそもなぜこの映像が流れたのか。
「情報戦」として大勝利を収めた
この動画がネットで注目を集める少し前、プレカリアートユニオンはアリさんマークの引越社専用の特設ページを開設(参照リンク)、そこにはこんな呼びかけがなされている。
「アリさんマークの引越社を相手取って提訴!みんなで弁償金を取り戻しましょう!!」
実は引越社では、引越作業で発生した事故の損害を社員やアルバイトも「連帯責任」として給料から天引きをしている。支払い額が凄(すさ)まじくなっても、社員の互助会から借金をして支払わなくてはいけないというほどで、辞めたくても辞められない社員も大勢いて「アリ地獄」なんて呼ばれている、という話が『週刊ポスト』などに掲載された。
この弁償金を、消費者金融における「過払い金」よろしく法の力で取り返そうというわけだ。実際、すでに2015年7月31日には、社員と元社員12名が賠償金など計約7000万円の支払いを求め名古屋地裁に提訴しており、特設ページでも、名古屋の集団訴訟代理人が弁償金以外にも固定残業代の設定や長時間労働に言及し、「違法・不法行為のデパート」として引越社を厳しく批判をしている。
そんな名古屋の動きと連動して、プレカリアートユニオンが引越社を相手に集団訴訟をやろうとした場合、なによりも大事になってくるのは「PR」だ。社員や元社員が一定数集まらないことには請求額も小さいので格好がつかない。そこで、弁償金を支払わされて不満を抱えながらも声をあげずにいられない社員、元社員たちに「これならば勝ち目があるかも」と思わせる形で、広く知らしめる必要があるのだ。
そういう意味では、冒頭で紹介した引越社側の恫喝映像はまさにうってつけだ。
「Yahoo!ニュース」なんかでも取り上げられるほど注目を集めたことで「世論」が味方につけば、ふんぎりがつかない社員や元社員も背中が押される。集団訴訟へ向けて、「引越社は人権無視のブラック企業」というイメージを拡散する「情報戦」としては大勝利を収めたと言ってもいい。
事実、この映像をアップした5日後には追い打ちをかけるように、署名サイト「Change.org」で「ブラックな労務管理を改めない限り、アリさんマークの引越社は利用しないよう」と呼びかけるボイコット署名キャンペーンを開始。9日後には、Aさんや元社員が管理職研修で「恫喝映像」にも出てきた幹部が、部落差別、国籍差別発言をしたと告発する映像もアップ。一気に攻勢をかけてきている。
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