新函館北斗駅不要論、北海道新幹線は1日も早く札幌へ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
JR北海道は北海道新幹線の上限運賃・特急料金を申請した。東北新幹線とは合算制となり、割高感は否めない。運賃体系の決定は航空運賃を意識しているはず。しかし、函館はもともと空港が近い。北陸新幹線のような成功方式は見えない。早く札幌まで完成させるべきだ。
北海道新幹線は“高い”
10月13日、JR北海道は北海道新幹線の運賃、料金を発表した。東京〜新函館北斗間で特急指定席を利用した場合、2万2690円となった。これは通常期の料金だ。繁忙期は200円高くなり、閑散期は200円安くなる。以下、通常期の料金で話を進める。
東京〜新函館北斗間の所要時間約4時間、距離は約820km。2万2690円に対して、ネットでは“高すぎる”という不満も見受けられる。東海道新幹線・山陽本線で比較すると、東京〜広島間は所要時間約3時間50分、距離は約900km。料金は1万8560円だ。確かにこれに対しては割高感はある。こうなる理由は、運賃と特急料金の計算方法が異なるからだ。東京〜広島間が運賃・特急料金共に距離を通算して料金を決めている。東京〜新函館北斗間は、運賃のみ通算して、特急料金はJR東日本区間とJR北海道区間をそれぞれ計算し、合算している。山陽新幹線と九州新幹線と同じ方式である。採算の厳しい区間で、少しでも価格を上げたいという思惑が見える。
しかし、現在の東京〜函館間の鉄道運賃や航空運賃と比較すると、まあ妥当かな、という設定ではある。ちなみに、現在のルート、東北新幹線“はやぶさ”と在来線特急“白鳥”または“スーパー白鳥”を乗り継ぐと、東京〜函館間は2万200円である。この金額に比べると、北海道新幹線利用時は2490円のアップ。ただし、所要時間は1時間半も短縮され、乗り換えもなくなると思われている。ところが実際は、東京駅〜函館駅間で、乗り換える場所が新青森駅から新函館北斗駅に変わっただけ。所要時間も1時間ほどしか変わらない。その対価として約2500円は、やっぱり高いと思わせる。
航空運賃はどうか。東京〜函館間の航空運賃は正規運賃でANAとJALが3万5200円。エアドゥが2万7100円。北海道新幹線だと、ANA/JALより1万2510円、エアドゥより4410円安い。ただし航空機の所要時間は1時間20分で、新幹線より3時間も早いし、航空運賃は事前割引で1万円台前半まで下がる。そう考えると、北海道新幹線はますます高いという声も分かる。
ただし、JR北海道が発表した金額は、国土交通省に届け出た「上限運賃」「上限特急料金」である。上限とある理由は「これ以上の金額にはしません」という意味である。実際には、この金額の範囲内で設定できる。北陸新幹線のときと同様に、今後、JR北海道とJR東日本が、どのような割引制度を設定するか見極める必要がある。
航空便はどうかと言えば、函館空港と函館駅はバスで20分。クルマならもっと早い。家族や友人に迎えを頼みやすい距離と言える。空港アクセスと飛行機の所要時間で約2時間だ。つまり、北海道新幹線と函館北斗駅は、航空機に対して圧倒的な優位ではない。今後も、東京〜函館間の移動は航空便で、新幹線はチケットが取れなかったときの代替手段になりそうである。
これを函館出身者の代表意見とはしない。しかし、考え方には一理ありそうだ。私が函館に観光や仕事で行く場合も、鉄道ファンである要素を除いてしまうと、飛行機のほうに気持ちが動いてしまう。函館市はそもそも、航空機が便利な都市である。
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