「日本の企業はおかしい。欧米の企業から見たら……」ベネッセ・原田氏の働き方(2/5 ページ)
ワークライフバランスの課題に関する議論は、さまざまな立場で行われている。しかし、日本人のワークライフバランスは改善されているのだろうか。ベネッセホールディングスの原田泳幸会長兼社長に、社員の働き方について聞いたところ……。
市場の競争モデルは変革した、しかし日本人の働き方は変革しない
まず原田氏は、今の日本の働き方の原点にあるものとして戦後の高度経済成長時代を挙げた。「先進国に追いつき、追い越せと突き進んできた戦後復興期における日本の経済成長は、協調主義、生産性、品質、コスト競争力といったものが支えてきた。その時代に企業がとった戦略が、社員の企業に対する忠誠心の徹底。社宅や社員寮といったものや、終身雇用といった文化は、この忠誠心の徹底を目的に生まれ、それが今日の日本人の働き方につながっている。社員はファミリーであり、徹底して会社を優先する。そういう文化が日本の働き方の原点にある」。過度な残業も厭(いと)わず、会社を最優先して家庭を顧みず仕事に邁進するという日本の企業戦士像は、これまでの日本の経済成長が生み出したものだというのだ。
しかし、今日の日本はどうか。高度成長の時代は終わり、豊かになったライフスタイルの中で企業が取るべき戦略も大きく転換した。この点について原田氏は、「高度成長期の日本の経済モデルは、もう終わった。例えば、コスト競争力で中国に負け、中国でさえ他国に追いつかれているような状況だ。生産性、品質、コスト競争力で勝てる時代では、もうない。今は、いかに価値を創造するかどうかが重要な時代だ」と指摘する。生産競争力だけでモノが売れる時代から、より高度で綿密な戦略と目の肥えた消費者を納得させられる価値の創出が求められるようになったのだ。
そのような時代に、社員には何が求められるのか。会社に対する忠誠心と家庭やプライベートを顧みない長時間労働ではないことは明白だ。「これからの時代に、“長い時間を働くことが結果を生み出す”ということはない。結果こそが全てであり、そこに労働時間は関係ないのだ。そこに日本の経営者は早く気が付き、トップから変わっていかなければならない。新しい発想を生み出し、質のいい仕事をするためには、ずっと頭の中が仕事モードでは決して前向きには取り組めない。オンとオフ、仕事と家庭、頭を使う時間と体を使う時間、そのバランスがなければ、新しい発想は生まれてこない」と原田氏は提言する。
また、このようにも話す。「島型の机を並べて上司が監督し、社員が顔を見合わせながら仕事をする緊張感のあるワークスペースも、残業を前提にした仕事のペース配分で無駄な時間を費やしてしまう働き方も含めて、日本の企業はおかしい。欧米の企業から見たら信じられないことだろう。日本の企業社会は、今のワークスタイルを脱却しない限り明日は変わらない」
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