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なぜ建設業界は責任とリスクを“下”に押しつけるのか:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
「杭打ち不正」が広がっている。横浜のマンションをきっかけに全国に広がりつつあるが、なぜ建設現場では責任が“下”に押しつけられるのか。その理由は……。
建設業界の常識
横浜のマンションで不正を行った担当者は、旭化成建材から発注を受けた下請け企業から派遣されてきた者で、三井住友建設から見れば、孫請け(3次請負)。他の不正に関与した50人の素性はよく分からないが、建設業界の常識からすれば彼同様に孫請け、ひ孫請けが多くを占めている可能性は高い。
以前のコラムでも述べたが、今回の問題の根底に「多重下請け」があるのは間違いない(関連記事)。そこに調査のメスが入るというのは国民としては喜ばしいことだが、果たしてどこまでできるのかという不安はある。過去にも「多重下請け」が招く事故や不正が明らかになったことはあり、その直後に大騒ぎするのだが、喉元すればなんとやらで時がたつとうやむやにされてしまう。そしてしばらくするとまた同じことが繰り返されるという状況が続いているのだ。
例えば今から23年前の、1991年3月、広島で建設中の橋げたが市道に落下し、橋げたの上にいた作業員5人と、自動車で通行していて下敷きになった9人の方の計14人がお亡くなりになるといういたましい大惨事が起きた。
原因は不明だが、橋げたをすえつける作業中に、担当者がジャッキを操作ミスしたのか、あるいはジャッキが故障したようで、異常な降下を起きてしまった。ストッパーの安全対策もしていなかったことで、市道に落下したのだ。
亡くなったとはいえ、9人の尊い命を奪った「加害者」として5人の作業員は世間から責められた。
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