「こだわりの○○」という言葉を使う店は、何もこだわっていない(絶対に):新連載・こだわりバカ(1/4 ページ)
街中に「こだわり」という言葉があふれている。「こだわりラーメン」「こだわり旅行」「こだわり葬儀」など。このようなこだわりのない使われ方に、コピーライターの川上徹也氏が燃えている。こだわりの原稿を読んでみたところ……。
今、日本の飲食・食品・製造業界をひとつの妖怪が徘徊(はいかい)している。「こだわり」という名の妖怪が。私はこの妖怪を何とか退治しなければ、という勝手な使命感に燃えてこの原稿を書いている。
情報誌などの飲食店の紹介を見ると、どの店も「こだわり」という言葉のオンパレードだ。そのこだわりの具体的な内容が詳細に書いてあればまだましである。そのほとんどは「こだわりの○○」と書かれているだけで具体的な中身は何もない。
ラーメン一杯を取り上げても、麺にこだわり、スープにこだわり、チャーシューにこだわり、そんな店だらけだ。中には「こだわりの店主によるこだわりのお客さんためのこだわりの一杯をお届けします」などという「リンカーン?」「ギャグ?」と思ってしまうようなコピーを真剣に使っている店もある。
試しに「こだわり」という言葉をインターネット検索してみよう。
出てくる出てくる。「こだわりの○○」といった食材や料理につけるならばまだカワイイ。「こだわり店長」「こだわりママ」「こだわり社長」など自分の肩書風につける輩もいる。「こだわや」「こだわり本舗」「こだわり亭」などといった名前の店が全国にどれだけあるかご存じだろうか? 「こだわりバス」「こだわりソング」「こだわり市」「こだわりプラン」「こだわりコラム」「こだわり医療保険」「こだわり婚」「こだわり辞典」「こだわりの転職」もうなんだってありだ。
「こだわり人物伝」「こだわり田舎自慢」「こだわりハーフタイム」などといったテレビの番組名まである。某航空会社のサイトでは「○○○(その航空会社の略称)は、お客様の声に徹底してこだわります」というフレーズがあった。そもそも日本語として変だよね。
ある旅行会社のプランは「こだわり大縦断3日間」。うーん、どんなすごいプランかと思ったら富山・石川・福井の北陸3県の名所を周遊するだけだ。いやはや。
いつから日本人はこんなにも「こだわりバカ」になってしまったのだろうか?
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