うつ病増加に労働人口減 日本の社会問題を「健康経営」は救えるか?:民間大手や自治体などが相次ぎ参入(3/3 ページ)
ストレスチェックの義務化が始まるなど、社員のメンタルヘルス対策は日本企業にとって喫緊かつ重要な課題になっている。そうした中、社員の健康促進こそが経営力アップに繋がるという考え方がここへきて強まってきているという。
相次いで健康関連の新団体が発足
ウェルネス経営に関して、FiNC自体の取り組みとしては、社内にCWO(Chief Wellness Officer:最高健康責任者)を設置し、社員の心身の健康にかかわる全イニシアチブに責任を持つ役職を明確化したことだ。
同社のCWOは乗松氏が務めており、例えば、勤務時間内に専門トレーナーによるストレッチ体操を行って社員がリフレッシュしたり、栄養士によるヘルシーランチを提供したりと、さまざまな試みを行っている。
CWOの役割としては、企業全体の組織作りにも関与する立場から、経営に対しても権限のある高い地位の人間であることが好ましいという。加えて、当然のように、きちんと自己管理できるなど、健康リテラシーが高い人材でなくてはならない。
なお、協議会の参加企業の中では、吉野家ホールディングスや日本交通でも既にCWOのポジションを導入して、ウェルネス経営を実践している。例えば、日本交通では、ハイヤー部門とタクシー部門のそれぞれにCWOを設け、社員の健康改善に取り組んだ結果、例えば、“メタボ体質”が解消した社員が出るなど、早くも効果が出ているようだ。
実は、ウェルネス経営協議会だけなく、経済団体や自治体などで構成される「日本健康会議」実行委員会や、テルモやタニタなど14社が設立した「KENKO企業会」など、今年になって社員や企業の健康の実現を目指す団体、コミュニティーがいくつも誕生している。
その裏には、こうしたヘルスケア市場のビジネス成長が今後期待できるという、各社のしたたかさも見え隠れする。しかし一方で、やはり企業の優秀な人材確保、維持が難しくなっている中、社員が健康であり続けることが経営のリスク低減にもつながるという認識が徐々に根付いていることは間違いないだろう。
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