CIAの“サボりマニュアル”は、なぜ「日本企業あるある」なのか:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
CIAの前身組織が作成した「敵組織の生産性を低下させる工作マニュアル」が話題になっている。「日本企業の姿をうまく表現している」といった声が多いが、企業だけでなく日本の問題点を的確に指摘しているのではないだろうか。
日本は「生産性の悪い国」
『Simple Sabotage Field Manual』が作成されたのは1944年1月17日。このころの日本の国際的評価はどうだったかというと、「生産性の悪い国」の象徴だった。
無謀な戦線拡大が災いして、補給路を断たれて孤立する部隊が続出。少ない戦力と飢えのなかで多くの兵士が死んでいく。ニューギニアで全滅、ガダルカナルから撤退したのもこの時期だ。疲弊する国内の生産性もガクンと落ち込み、米国がバンバン空母を量産していくなかで、日本では1隻つくるのがやっとだった。
このまま続けていても状況は悪くなるばかりであるにもかかわらず、勤労挺身隊として25歳未満の女性の動員を開始。学徒出陣もスタートし、おまけに徴兵年齢も引き下げるという愚策に走り、「いくぞ、1億火の玉だ」というスローガンのもと、国家権力が有無を言わさず若者を戦地へ送り出すという生産性のかけらもない戦術をとり始めるのだ。
そんな「生産性の悪い国」が崩れていく様を、極めて冷徹な目で分析をしていた人たちがいる。それこそが、『Simple Sabotage Field Manual』を作成したOSSである。
OSSが生まれたのは1942年6月、もともとは大統領の対欧州政策を策定されるための情報機関だったが、真珠湾攻撃を受けて、戦争遂行と勝利するための情報機関へと姿を変える。つまり、OSSは日本という敵国に対する情報を収集し分析を行う機関だったのだ。
OSSの最大の特徴は、民間登用だ。諜報機関といえば軍人という時代、OSSの責任者は、大学教授、弁護士などが並び、宣伝活動責任者にいたってはラジオニュースのキャスター。有名なところでは、『駅馬車』などで知られる映画監督のジョン・フォードもメンバーだった。
想像して欲しい。このような米国の民間人たちが当時の日本を調べていたわけだ。その過程で彼らは気づいたはずだ。坂道を転がるように衰退していく日本の「生産性を低下させている原因」が何かということを。その知見をスパイの工作へ応用したものが、1944年に出された『Simple Sabotage Field Manual』ではなかったか。理にかなっていない消耗戦を押し進める敵国が、『Simple Sabotage Field Manual』に大きな影響を与えたのは明らかだろう。
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