次のヒット商品は? 1億総「シンデレラコンプレックス」のワナ:森永卓郎の“白馬の王子”理論(1/3 ページ)
10年以上も前から「次に来る新商品のトレンドは何?」とよく聞かれる。断言しよう、そんなものはない。白馬の王子様は来ないのだ。
私は、シンクタンクで働いていた10年以上前から、いろいろな人に「次に来る新製品のトレンドは何ですか?」という質問をされ続けてきた。私は、そのたびに「そんなものは、ありません。そう考えること自体が、高度成長期の呪縛から逃れられていない証拠です」と答えてきた。
根拠なく言っているわけではない。実は、新製品が経済を引き上げる力は、確実に下がってきているのだ。
私はかつて、新製品がマーケットのどれくらいを占めているのかという通産省(現・経済産業省)の調査に携わったことがある。統計的に「新製品」をとらえることは難しいのだが、鉱工業生産指数の構成品目に採用された時点をその商品の発売時期と認識することにして、過去10年間に発売されたものを新製品と整理することにした。そして、発売時期ごとに、その商品の付加価値の動きを追いかけることにしたのだ。
結果は、衝撃的なものだった。高度経済成長が始まった1960年には、付加価値のうち45.3%、つまりほぼ半分を新製品が占めていた。ところが1970年には18.4%、1980年には10.8%、1990年には5.8%と、10年で半分というペースで減り続けていたのだ。このペースが続いているとすると、現在の新製品比率は1%くらいのものだろう。しかも、それは10年分の新製品で1%だ。
1年あたりに直すと、わずか0.1%だ。今でも、企業は毎年大量の新製品を出し続けている。それでも、新製品が、わずか0.1%しか経済を引き上げる効果を持たないということは、それだけ新製品の成功確率が下がっているということを意味する。「新技術に基づくが新製品が次々に登場して、世の中が激変する時代になっている」という話は、真っ赤なウソだったのだ。
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