ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。
世界トップ10に入る「全国紙」が複数乱立
そんなところに「軽減税率適用」である。
『朝日新聞』の飯田真也会長が12月17日付けの紙面で「民主主義を支え活字文化を守るためには、知識への課税は最小限度にとどめるべき」と述べたように、新聞は食品と同様に重要な社会インフラだから、とにかく安くしないと国が滅びる、くらい勢いのあることを新聞業界は主張している。軽減税率を求める日本新聞協会の特設サイトにも「ニュースや知識は、誰でも、どこでも、手軽に手に入れられるように、コストは可能な限り低い方がよいと考えます」とある。
民主主義の世の中では、コストを可能な限り低くするために、まずは経営側の「努力」が求められる。具体的には、無駄を削減し、事業を適正な規模にするためのリストラを行わなくてはいけない。が、新聞社がそのような「努力」をしているようにはとても見えない。そもそも、タダで大量にバラまいているものを、できるかぎり課税するなというのもおかしな話だ。
そんなことを言うと、新聞業界は「欧州では新聞は軽減税率の対象で、世界ではジャーナリズムは保護されている」なんていきり立つのだが、実は日本と欧州では「新聞」の意味するところがまったく違う。
あちらの新聞は、地域に根ざした地方紙が多く発行部数は50万程度で、発行しているのは日本でいうところの中小企業クラスだ。紙面にはそれぞれの地域に生きる人たちにとって欠かせない生活情報も多く掲載され、小さな不正もコツコツと追及して明らかにする。まさに生活必需品だ。
一方、日本は900万部とか700万部なんて世界トップ10に入る「全国紙」が複数乱立し、テレビ、不動産などのグループ企業も有する大企業も少なくない。紙面は全国で似たような話が似たような切り口で掲載されている。経営陣から記者まで首相やら高級官僚やらと会食を繰り返し、距離は近いわりに、不正を厳しく追及しているイメージがない。米国のOpen Source Centerというメディア研究機関が過去に指摘したように、「政治や企業などほとんどのスキャンダルは新聞ではなく、週刊誌や月刊誌から公表されている」のだ。
つまり、日本の新聞というのは、西側諸国のそれと比較すると驚くほど「経営」の視点が欠落していることに加え、「国から手厚い支援」を受けるのが当たり前だと主張するというかなりユニークな思想をもっていることになる。
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