北海道新幹線に援軍が続々……JRグループの総力戦:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
北海道新幹線は所要時間や料金について、前評判が芳しくない。しかし開業を控えてJRグループと国土交通省が次々に活用施策を発表している。青春18きっぷ特例、貨物新幹線の開発計画だ。北海道新幹線に向けた総力戦は、全国規模の応用も期待できる。
「貨物新幹線」構想が起動した
北海道新幹線の新たな援軍は国土交通省だ。北海道新聞は1月1日に「青函に時速200キロ『貨物新幹線』検討 新幹線は東京へ最速3時間台」(関連リンク)と報じた。国土交通省、JR北海道、JR東日本、JR貨物なとが、新型の貨物新幹線車両を検討しているという。新型車両は旅客用のE5系、H5系を基礎とし、貨物用コンテナを積載可能。青森側と函館側に拠点を設けて、在来線貨物列車と貨物新幹線のコンテナをクレーンで積み替える。
青函トンネルの貨物新幹線構想は2012年の国土交通省資料にも記載されていた。それがいよいよ起動した。2020年代前半の実用化を目指すというから、2016年から10年以内という目標を立てたようだ。2031年の北海道新幹線の札幌延伸に間に合う。
現在、貨物列車は青函トンネルを時速110キロメートルで走っている。貨物新幹線は時速200キロメートルで走行し、スピードアップと積み替え時間のロスを補う。その結果として、旅客用新幹線は貨物列車に遠慮なく、時速260キロメートルで走行可能だ。これで東京〜新函館北斗間は最速で3時間44分。函館ライナー経由で函館駅まで約4時間となる。
貨物新幹線は旅客用新幹線のスピードアップに貢献する。しかし、貨物新幹線自身も、応用すれば全国の新幹線と貨物鉄道ネットワークに大きな恩恵をもたらすだろう。この話も長くなりそうだ。次回、じっくりと考察する。
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