あなたの年金が減るかも? 「マイナス金利」がもたらす影響:3分で読める 荻原博子の今さら聞けないお金の話(2/2 ページ)
いま話題になっている「マイナス金利」とは一体どういうものなのか。何が起ころうとしているのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんが分かりやすく解説します。
マイナス金利で分かれる明と暗
マイナス金利の登場で、株価の明暗ははっきり分かれました。不動産業など借り入れが多い業種は、金利が下がるとの予測から買われて大幅高になりました。一方、金融機関は損失が膨らむのではないかという懸念から売られて下がりました。
その後、あまりに高騰しすぎたので不動産株は売られていますが、金利が一段と安くなったことで借り入れが大きい企業ほどメリットを享受できるという状況には変わりありません。
また、同じく住宅などのローンがある人にとってもメリットです。既にローンを借りている人も、安い金利のローンに借り換えるとメリットが出てきます。例えば、同じ銀行で変動金利から低くなった固定金利に換えるというようなケースも有利でしょう。変動から固定、固定から固定に替える場合、多くの銀行が手数料無料もしくは低い手数料で簡単に対応してくれます。
ローンそのものを借り換えるとなると、契約そのものをやり直すことになるため、印紙税や登録免許税、抵当権抹消のための費用や司法書士への支払いなどさまざまな費用が掛かります。しかしそれでも総返済額が減り、ローンの負担が少なくなりますから検討の余地はありでしょう。
一方、心配なのは、年金など私たちのお金を大きく運用している機関です。私たちの年金積立金は、約4割を国内債券で運用しています。金利が低下すると、この国内債券の運用利回りが低下する可能性があります。年金積立金については、昨年の第2四半期に7兆8899兆円の損失を出しました。その後、株式での運用比率を上げたため、年初からの急激な株価の下落によってさらに10兆円以上の損失が出ているのではないかと推測されています。そんな中、さらに債券利回りの低下まで加わると、私たちの年金は一体どうなるのだろうと不安になります。
債券で多額の運用をしているのは、年金積立金だけではありません。一般の銀行や保険会社だけでなく、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、共済なども国債で運用している比率が高いので、今までに比べて運用が厳しくなり、これが将来的に私たちのもらう給付金や配当などに影響を与える可能性もあります。
昨年後半から、世界経済が不安定化しています。こうした中、多くの経営者は先行きに不安を感じているということが昨年末の日銀短観にもはっきりと出ています。そこへさらにマイナス金利という今まで経験したことがない事柄が出てきたことによって、ますます先が見えなくなってきたと感じる経営者が増えたことでしょう。そういう意味では、これから始まる春闘にも影響が出てきそうです。
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