マスコミ報道を萎縮させているのは「権力」ではなく「中立公平」という病:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
総務大臣が公平性を欠く放送を繰り返した放送局の電波停止に言及したことについて、ジャーナリスト6人が「発言は、憲法や放送法の精神に反している」などと声明を発表。西側諸国のジャーナリズムは「政治的中立性」といったスローガンを放棄しているのに、なぜ日本は支配されているのか。
ジャーナリストは「神」ではない
トランプ氏嫌いのインテリ層からすれば、「これぞ正義だ」と拍手喝采となるが、各地で快進撃を続けていることからも分かるようにトランプ氏にも多くの支持者がいる。それが社会に不満を抱いている白人労働者層だろうがなんだろうが、彼らからみればえらい「偏向報道」といえなくもない。ただ、そこで「偏向メディアは不買だ! デモだ!」ということにはならない。
これが「ジャーナリズム」なのだ。あちらでは新聞の社説は、政治的スタンスを明確にして、こうしろああしろと主張するのが当たり前なのである。
にもかかわらず、日本のテレビや新聞はこぞって『ワシントン・ポスト』の社説を「異例のことだ」と驚いて報じた。自分たちも安倍首相に対して似たような論調で批判をしているにもかかわらず、「そんなに政治色出して平気?」なんて調子で、まったくの他人事なのである。
これはマスコミという人たちが、いかに客観性を欠いているということもあるが、なによりも「ボクちゃんたちは中立公平だもんね」という信仰にも近い思い込みに囚(とら)われているということの証でもある。
ジャーナリストは「神」ではない。人間である以上、思想や信条の偏りもあるし、善悪の判断も個々で異なる。どこかで滝に打たれて修行をすれば、「中立公平な視点」が習得できるなんてものでもない。そういう人間の集合体であるテレビも新聞も当然、偏る。だから「政治的に公平であること」なんて無理難題をふっかけられると萎縮する。欧米のジャーナリストのようにもっとガツガツ自分たちの主観で報じたいのにそれができないのでステマのようにこっそりと忍び込ませる。これが今の「マスコミ不信」の元凶だ。
「中立公平」をうたうくせに偏るもんだから、清楚なイメージで売っていたのに実は不倫してましたというタレントみたいな激しいバッシングにも逢う。「中立公平」をうたいながら、「みんなでトイレをつまらせよう」なんてテロを扇動するようなシュプレコールを行うから「反日」とか叩かれる。
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