台湾大地震から17年、「エコビレッジ」として復興した桃米社区の取り組み:事例に学ぶ、地方創生最前線(2/3 ページ)
台湾大地震から、今年で17年目。震源地付近の桃米社区(社区:台湾における地域コミュニティの単位)は、台湾でも有数の「エコビレッジ」として復興し、台湾の地方創生に大きな影響を与えている。
豊かな自然に着目し「エコビレッジ」をつくる
廖氏は何かの取り組みを始めるのではなく、ただひたすら住民の話に耳を傾けた。「そこでよく耳にしたのは、震災の前から仕事がなくて若者が戻って来られない、この街に未来はないという声でした。桃米社区は竹細工で知られ多くの家族経営企業があったのですが、台湾民主化以降は竹関連の産業が海外に移転してしまい、衰退の一途をたどっていました」
そんなとき、政府から桃米社区に調査団がやって来た。廖氏が注目したのは、彼らの調査報告のある部分だった。「桃米社区は小さな地区ですが、台湾固有種のカエル29種のうち、23種が生息していることが報告によって分かりました。そのとき、地域の自然を守っていくことと、新しい産業づくりを両立して、この街を復興することはできないかと思ったのです」
手始めに廖氏は、荒廃しつつあった森林を保全するための植林を始めた。住民は植林に参加することで、日々の収入を得ることができた。それに加えて、地元住民から希望者を募って、エコロジーガイドのトレーニングを開始した。「経済を生み出すことも重要ですが、それ以上に大切なのは住民が自らの土地をよく知り、誇りを持つことでした。桃米社区には魅力がないと思い込んでいた住民に、自信をもってもらいたかったのです」と廖氏。
震災から2年が経とうとするころには、資格を持ったエコロジーガイドが9人誕生した。手応えを感じた廖氏は、「桃米の豊かな生態系は観光資源になる」と新たに民宿やレストランをオープンする経営者のための育成プログラムを開始した。とはいえ、民宿や地場の料理を提供するといったアイデアは地域住民にとって斬新すぎ、「誰がわざわざこんな田舎やって来るのか」という声も少なくなかった。しかしながら地道な取り組みが台湾の民間企業や大学に届き、彼らの支援リソースを巻き込むことで、観光地としての桃米社区の下地作りは着々と進んだ。企業によるCSRという概念は、復興支援を機に広く台湾社会に浸透していった。
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