ガリガリ君とカップヌードル「攻めたCM」の命運を分けたものはなにか:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
先週、2つのCMがネット上で大きな話題となった。値上げ謝罪をした「ガリガリ君」のCMは絶賛の嵐だったのに、ビートたけしさんが学長に扮した「日清カップヌードル」のCMは批判の嵐。この2つのCMは、なぜ命運を分けてしまったのだろうか。
「値上げ」を逆手にとって、消費者が楽しめる「小ネタ」に
しおらしく頭を下げる「ガリガリ君」のCMと、「攻め」という言葉と結びつかないかもしれないが、企業広報の常識的にはかなりぶっ飛んでいる。「値上げ」というネガティブな情報発信はなるべく目立たぬよう、しれっと行うというのが鉄則とされているからだ。
この「攻め」の姿勢は、「日本一遊び心のある会社」と評される赤城乳業の企業文化のようなものだ。近年話題になった「ガリガリ君コンポタージュ味」「ガリガリ君ナポリタン味」など攻めた商品開発も、もともとは流通関係者から「最近、冒険していないんじゃない?」という挑発を受けて行われた。営業から反対意見も出たが、「普通のことをやっていたらウチの会社でなくなる」と社長がGOサインを出したというから、「あそびましょ。」のコーポレートスロガーンは伊達ではない。
だが、そういうスタンスもさることながら、あのCMに「攻め」を感じるのは、「値上げ」というのを逆手にとって、消費者が楽しめる「小ネタ」となっていることだ。
井上会長をはじめ社員のみなさんは神妙な面持ちで頭を下げているにもかかわらず、どこかユーモラスな印象を受けてしまうのは、バックに流れる故・高田渡さんのフォークソング「値上げ」によるところが大きい。
ニクソン・ショックのあった1971年にリリースされたこの曲は、「値上げはぜんぜん考えぬ」という威勢のいい歌い出しが、やがて「年内」「当分」「今のところ」と旗色が悪くなり、「検討中」「値上げもやむを得ぬ」とトーンダウンし、しまいには「値上げに踏み切ろう」となる。価格高騰へと突き進む世相をチクリと皮肉ったフォークソングなのだ。
普通の企業なら、「ふざけていると思われるかも」というリスクを想定し、謝罪のバックなどには流さない。しかし、赤城乳業は「気持ちを真っ直ぐに表現しています」と胸を張る。「小ネタ」に対するこだわりというか、真剣さがハンパではないのだ。
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