災害が多い国に学ぶ、倒れても立ちあがる「復活力」:事例に学ぶ、地方創生最前線(2/4 ページ)
日本とアイスランドには共通点が多い。島国であり、それぞれ暖流と寒流がぶつかる漁場に面しているため、漁業が非常に盛んだ。また噴火や地震も多いが、アイスランドは災害に対してどのように向き合っているのだろうか。
リーマン・ショックの影響で急激に景気が悪化
そんなアイスランドは、2000年を境に欧州の最貧国から、最も豊かな国のひとつへと急成長したことで知られている。ほぼ漁業一本槍だった時代から、その後アルミニウムの精錬で富を蓄え、2000年代からは金融業が台頭するようになった。高金利政策によって海外投資を呼び込み、結果としてアイスランドの1人当たりのGDPは7万ドル近く(日本の約2倍)まで高騰した。
しかしながら金融業に傾倒しすぎた経済は一旦崩れると脆(もろ)く、米国発のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機では大ダメージを受けた。クローネの価値は3割下落し、3つの大手銀行が破たんし国有化された。日用品のほとんどを輸入に頼るアイスランドでは、パンの値段が2倍になり日常生活にすら困る人であふれた。そして好景気に浮かれて住宅や自家用車のローンを組んだ人たちの借金は一気に膨れ上がった。
そんなアイスランドが近年再び復活している。8%近かった失業率は4%台まで減少し、マイナスだった経済成長も4%まで持ち直している。その背景にあったのは、金融危機によるクローネ安だった。自国通貨の下落も悪いことばかりではなく、輸出産業である漁業が復活するとともに、雄大な自然を生かした観光業が一気に花開くきっかけとなった。国として観光業には力を入れており、2010年、11年の火山噴火の際でさえ「火山の国」を大々的にアピールし、かえって観光客を増やすことに成功したという。こうしたアイスランド人のたくましさには、見習うべきものがあるだろう。
観光産業と併せ、注力している分野が次の産業の担い手を育てるスタートアップ支援だ。だが、そもそもわずか32万人の国家でそれほど起業家が輩出されるものなのだろうか。アイスランドの起業家支援の草分けとされる非営利組織、「アイスランディック・スタートアップス」を訪ねた。オフィスはアイスランド大学の敷地内にある。起業支援プログラムを運営するスヴァーナ・オラスドッティルはこう語った。「金融危機後、アイスランドでは起業を志す人が増えました。元々仕事熱心な国民なので、仕事がないなら自分でつくろうと思ったのは自然なことだと思います。キャリアのひとつの選択肢として起業を考える大学生も増えつつあります」
アイスランディック・スタートアップスは企業や銀行から得た寄付を財源に、アイデア段階の事業にはプロトタイピングのための数十万円を提供し、成長段階の事業には銀行と協力して投資するなど、幅広い支援を提供している。「助成金も重要ですが、何より有効なのは100人を超えるアイスランドや他の北欧諸国の起業家によるメンタリングです。ロールモデルの存在が後に続く起業家を育てるエコシステムを構築することが大切だと思います」とスヴァーナ。オフィスは支援を受ける起業家たちのシェアオフィスにもなっており、若者たちでにぎわっていた。
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