“場外”で激化する関電VS. 大ガス 「奇手」を繰り出しはじめた関電の狙いとは(2/4 ページ)
4月の電力小売自由化で、首都圏の東京ガスとほぼ同じペースで、関西でも大阪ガスが契約数を伸ばしている。関西電力は高浜原発2基を一度は再稼働させながらも挫折し、値下げを断念して新電力との競争で大きなハンデを負っている。だが、4月になって東京ガスと提携したり、首都圏で発電所建設を加速したりと、“奇手”とも思えるような発表が相次いでいる。
3〜5年後には関電のシェアの5%以上を奪う
大ガスの都市ガス契約数は約720万で、関電の電力契約数の6割近くに及び、東電に対する東ガスの契約数の比率よりも大きい。その分、大ガスは電気とガスの「セット割」が適用可能な世帯が多くなり、関電は東電以上に都市ガス会社に電気のシェアを奪われやすくなっている。
関電(従量電灯A)と大ガス(ベースプラン)の料金を比較すると、夫婦と子どもが一戸建てに住み電気を月平均700KWhを使う「ファミリー」の場合、大ガスはガスセット割引と2年縛りの長期2年割引を適用して月1万9624円になる。関電は2万646円で、大ガスの方が月1022円安い(税別で燃料費調整は考慮しない/大ガスの料金シミュレーションによる)。4.9%安くなり、乗り換えの動機づけとしては十分だろう。
一方、単身や高齢者などで月平均200KWhを使う世帯では、関電は月4867円なのに対し大ガスは月4921円で、乗り換えたら月に64円、損してしまう。同じ条件で東電から東ガスに乗り換えると23円の損となり、関西も首都圏も、ガス会社への乗り換えにおいて電気を多く使うファミリーには有利、単身世帯や高齢者世帯には不利という構図は変わらない。東電と違って関電は2015年に値上げを繰り返したが、それでも月200KWh程度の使用量では大ガスに乗り換えるメリットは出ない。独り者が「関電はアホみたいに高いから仕返ししたるわ」と、自分で電気料金を計算、比較せずに大ガスに乗り換えてしまうと後悔する結果になりかねない。
料金収入が低くて利益が出にくい「おいしくない世帯」は関電にそのまま任せて、大ガスは低コストで大きな料金収入が得られる「おいしい世帯」だけを乗り換えさせようという、巧妙な料金体系になっている。それは東ガスと全く同じだ。
大ガスはこの料金体系を武器に、電力小売自由化初年度の2017年3月期、一般家庭14〜20万戸の電気供給契約の獲得を目指している。中・長期では3〜5年後をメドに70万戸を目指す。関電のシェアを、初年度には1%以上、3〜5年後には5%以上奪いたいという数値目標である。
しかし、電力事業それ自体の中身は、大ガスと東ガスではかなり異なっている。
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