「ワキ汗」ビジネスがこの1〜2年で拡大している秘密:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
ここ数年、制汗剤市場が拡大している。その中でも「ワキ汗」のカテゴリーが一気に拡大しそうな気配である。「そんなのオレには関係ないよ」「興味ないなあ」と思われた男性も多いかもしれないが、筆者の窪田氏は「対岸の火事ではない」と指摘する。その理由は……。
製薬会社が手助けする理由
いったいなぜライオンの「ワキ汗」カテゴリー創出の手助けになるようなことを製薬会社がやるのか、と首を傾げるかもしれないが、彼らには彼らで「疾患啓発」の目的があった。簡単に言うと、「ワキ汗は病気」ということを世に知らしめていたのだ。
え? 脇に汗をかくのが病気なのと驚くかもしれないが、日常生活に支障があるような脇汗は、「腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」と呼ばれる。GSKが運営する「ワキ汗情報サイト」の説明を以下に引用させていただこう。
『明らかな原因が存在しないワキの多汗症を「原発性腋窩多汗症」といいます。日本人の有病率は5.8%で、日常生活に頻繁に支障をきたす重度の患者さんは全国に220万人以上いると推定されています』
「患者」ということになれば当然、この国では保険が適用される。2012年11月からは、発汗を促す交感神経からの伝達物質をブロックし、ワキ汗を4〜9カ月間抑制する「ボトックス注射」という治療法が保険適用されるようになった。
3割負担でも3万円程度というわりと高額な「ボトックス注射」を日本で独占販売しているのがGSK。2010年5月に厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」による開発要請を受け、国内で臨床試験を進めていた。
それがまさに絶妙のタイミングなのだが、有働アナのワキ汗に苦情が寄せられ、注目が集まってほどなくして、効能追加の申請を行っている。保険適用された2012年に入ってからは、さまざまなメディアを駆使して、ボトックスのマーケティ……いや、「腋窩多汗症」の啓発に力を入れている。
最近、女性がワキを隠しているイラストとともに、「そのワキ汗、お医者さんの相談できます」と記された電車内広告をよく見かけないだろうか。
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