これまでのPR手法が通用しない!? アパレル業界が次にとる一手とは(2/3 ページ)
大きく変化し、新たなトレンドが生まれ続けているファッション業界。“常識”や“反対意見”を打ち破ったところに、新たな突破口がある――。いち早く流行を先取りし、さまざまな挑戦を続けるTOPLOG代表取締役兼CEOの亀山隆広さんに、アパレル業界の“次の一手”を聞いた。
オフラインもダメ、オンラインもダメ……苦戦するアパレル
雑誌を読まない消費者が増え、インフルエンサーを使ったPRの効果も薄れてきた……そんな状況で、アパレルはプロモーションに苦戦し始めている。
費用対効果を図ることができないファッション誌への出稿をやめ、クリック数などの効果を見られるオンライン広告を出すブランドも増えた。オフラインの広告費が前年比95%と下げる一方で、オンライン広告は同117%と増えている。しかし、今度は違った悩みがアパレルブランドを襲った。
「アパレルとWeb広告というと、とにかく「●%OFF」といったセール訴求のようなものが多い。『憧れの人が着ている服だから』を入り口にして服を買う消費者と、『安いから』で入ってくる人とでは、ブランドに対する考え方が変わってしまうはず」
どこでプロモーションしたら効果がでるのかが分からない。では、広告費予算を削ってしまおう……そんな判断を下すアパレルブランドは少なくないのだとか。ただし、そうすればどうしても露出は減る。
「いい商品を作っても、それをアピールする場所がないと考えているブランドが多い。ブランドの世界観を守りつつ、雑誌を読まない消費者にアプローチできる手段がないかと考えて、『じゃあ、自分で作って、業界全体を盛り上げよう』と思った」
新たな挑戦「TOPLOG」
スタートしたのがスマホ向けアプリ「TOPLOG」だ。スマホ内ではファッションに関する記事を読むことができる。スマホ内の記事ながら、梨花などの有名モデルが登場しているのが特徴だ。
人気のコンテンツは「ハイプラ(高い服)とプチプラ(安い服)のミックスコーデ」や「着回し」、モデルのプライベートにフォーカスしたもの。「異性ウケ」も強い。こうしたラインアップを聞いていると、まさに雑誌の特集をそのままアプリにしたような印象を受ける。
「TOPLOGは、Webでは信じられないくらい、1つのコンテンツにかけるコストを高くしている。モデルをアサインして、スタジオを抑えて、編集やライターも使ってコンテンツを作る。印刷しないのでその分のコストはかからないが、ファッション誌がやっていることをWebでやっている――という感じ。一般的なWebメディアのほぼ10倍くらいかけて作りこんでいる」
有名モデルの出演は、ギャランティを出せば出てもらえるというわけではない。彼女たちは、受ける仕事のクリエイティブの積み重ねによって自分のキャリアが定まっていく。その世界で美しく服を魅せるスタッフ陣がそろっているかということが非常に大切であり、それを任せられる環境であるという信頼がメディアにあるかどうかを見極める必要がある。そういったことを知らないとボタンを掛け違えて出演を承諾してもらえない。これまでの人脈やノウハウが生きた形だ。
ブランドも同じだ。アパレルブランドはイメージを大事にするので、あまりに“そぐわない”と思うようなアプリや雑誌には出稿しない。
有名モデルや有名ブランドが登場すると、アプリ自体の「ブランド力が上がる」「業界での位置」が決まるという側面がある。また、「こんな有名モデルや有名ブランドがアプリに登場している」ということは、ユーザーだけではなく、スタッフのモチベーションアップにもつながるのだそう。
“読まれる企画”でアプリのコンテンツの質を上げ、“有名モデル出演”でアプリのブランドを向上させていく。TOPLOGはこの2軸で成長を考えているのだ。
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