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多くの人に尊敬されていた、大横綱・千代の富士が残した“遺言”赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

大相撲の第58代横綱で元千代の富士の九重親方が、すい臓がんのため息を引き取った。身長183センチ、体重120キロ台の小兵ながらも筋骨隆々で、しかも「イケメン」。現役時代の横綱・千代の富士に胸を躍らせた人は多かったはずだ。

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ただひたすら黙々と汗を流し続けた

 オレは是が非でも脱臼なんかに負けず、横綱として頂点に立ってやる――。そう自分に日々言い聞かせ、千代の富士はただひたすら黙々と汗を流し続けたという。後の全盛時に体脂肪率は10.3%。力士としては驚異的な数値を記録する均整の取れた彫刻のような鋼の肉体は、こうした本人の死に物狂いの努力によって作られていったのである。

 伸び悩んでいたころには主に相手を強引に引っ張り込んで力任せに投げ飛ばすなど軽量の体には明らかに負担のかかりそうな荒々しい戦法が目立っていた。しかし、その取り口も熟考と研究を重ねて徐々に変えていった。自らが小さな体格であることを考え、前まわしを引きながら頭をつけるスタイルを完成させ、脱臼克服の大きなプラス材料につなげた。

 脱臼克服を念頭に置きながら筋力アップを図ったことで、「取り組みに臨む前からまわしを緩まぬようにキッチリ締め上げ、ガッチリと四つに組んで相手の指がまわしにかかっても鍛え上げた強い筋力を生かしながら腰のひと振りで払いのける」「まるで短距離選手のスタートダッシュのような素早い立ち合いから、鍛え抜かれた腕力でまわしを引き付けて自分より重い相手の腰も“一気の力”で浮かせる」「相手の頭を押さえつけながら上手投げで投げ飛ばす“ウルフスペシャル”をここぞという場面で繰り出す」などのように戦法を徐々にマイナーチェンジしていった。

 「脱臼と向き合って肉体改造を行い、相撲のスタイルも変え、さらに頭を使いながら取り組みに臨むようになった。この流れこそが大横綱千代の富士を作り上げたのだ。つまり脱臼がなかったら、おそらく彼は短命力士で終わっていた」とは師匠で現相撲解説者・北の富士氏の言葉である。


両国国技館で千代の富士は活躍した

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