それでも「カップヌードル謎肉祭」販売休止を「品薄商法」だと疑ってしまう理由:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
日清食品の「カップヌードル謎肉祭」が販売休止に追い込まれた。ネット上では、多くの人が「品薄商法では?」と疑いをかけているが、その一方で否定する声もある。今回の騒動を「見通しが甘かったのね」と素直に受け取っていいのだろうか。筆者の窪田氏は……。
目標の立て方が「不自然」
まず、「謎肉」というワードだ。
そもそも、この言葉は「2ちゃんねる」などでダイスミンチのことを「謎の肉」「ぞぬ肉」などと呼ばれていたことに由来するもので、2015年4月、カップヌードルが刷新される際、日清側も使い始めた。ネットスラングに完全に乗っかったのである。
マクドナルドが「ピンクスライム・チキンナゲット」などという新商品を売り出さないように、普通の大企業はこういう自虐ネタをしない。当然、インパクトは絶大で、『日経新聞』の見出しになるほどだった。
『カップヌードル、6年ぶり「謎肉」復活で若者開拓』(日本経済新聞 2015年4月29日)
そのような「謎肉」推しは今年に入ってからも続き、7月27日には、カップヌードルの公式アカウントに「謎肉」がつめられていると思しきコンビーフのような缶を開けている画像を公開。これは1カ月で1万7511リツイートと、1万3172の「いいね!」を得て、公式アカウント開設以来最高の反応になったという。
なにが言いたいのかというと、この「謎肉」という言葉を日清は1年半前から、かなりの力を注いでプロモーションをしてきたということを申し上げたいのだ。
これは過去、「品薄商法」の疑いをかけられた商品とは大きく異なる。確かに、サントリー食品インターナショナルの「レモンジーナ」や「ヨーグリーナ」、ハーゲンダッツの「ミニカップ 華もち」シリーズも発売前にSNSでプロモーションに力を入れていたが、その期間はわずか1〜2カ月に過ぎない。だからこそ、この短い時間内での反響が、果たしてネットだけのものなのか、現実の注文数に結びつくものなのか、判断に迷って初期出荷数を見誤ってしまったのである。
しかし、「謎肉」は違う。1年半前から仕掛けたプロモーションである以上、この人気が本物かどうかを見極めるだけの時間も、材料も、十分にあったのだ。
そう言うと、「いやいや、確かに自分たちで煽りに煽ってきたものの、その予想を超えるほどSNSの反響があったんでしょ」と思う人もいるだろう。
ネットの需要予測は多くメーカーも頭を悩ましているので、日清といえそういう部分もあるのかもしれない。しかし、プロモーションの丁寧さと比較しても、目標の立て方があまりにも粗いというか、甘すぎて、どうにも不自然さが否めない部分もあるのだ。
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