「豊洲新市場はカジノにすればコスト削減になる」は本当か:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
10月9日号の『サンデー毎日』で、複数の大手流通企業やアミューズメント会社が「豊洲を買いたい」と名乗りを上げているという。「カジノは豊洲に誘致したらいい」という声も出ているが、本当にそれでいいのか。筆者の窪田氏は……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
こじれにこじれる豊洲新市場問題を象徴するような「怪情報」が飛び込んできた。
先日発売された『サンデー毎日』(10月9日号)の中で、複数の大手流通企業やアミューズメント会社が、「豊洲を買いたい」と名乗りをあげたという情報とともに、こんな話が紹介されているのだ。
『自民党などが15年の通常国会に議員立法で提出した「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)に絡み、「カジノは豊洲に誘致したらいい」という声が出ているというのだ』
確かに、こういう話がまことしやかに囁(ささや)かれているのは事実で、この問題で毎日のようにテレビに出演し、東京都の専門委員も務める建築エコノミスト・森山高至さんも、TBSの情報番組でこんなことをおっしゃっている。
「もともとお台場カジノ構想があったし、豊洲新市場をカジノにすればコスト削減になる」
ただ、「豊洲カジノ」はあまり現実的ではない。主張されている方たちが頭の中で思い描いている「カジノ」と、現実の「カジノ」に大きなギャップがあるからだ。
森山さんたちの頭には、「土壌や水質に問題があってもギャンブル場なら平気だろ」という考えがベースにあるが、今日本政府が検討している「カジノ」は巨大ギャンブル施設などではなく、「IR」(カジノを含む統合リゾート)だ。15年以上に渡って、日本の「IR」の必要性を訴えてきた岩屋毅衆議院議員(国際観光産業振興議員連盟幹事長)が10月3日に発売した『「カジノ法」の真意 「IR」が観光立国と地方創生を推進する』(KADOKAWA)の中で、このように述べている。
『カジノはいまや世界の140カ国で認められ、適切に運営されている国際的なゲーミング(金銭を賭けておこなわれる遊興)です。そして着目すべきは、そのカジノの形態が、近年、大きく様変わりしてきているということです。この10年の間に誕生してきているカジノは、数千室規模の高級ホテル、シアター、レストランゾーン、ショッピングゾーン、国際会議場や展示場、スポーツ施設、遊園地などが一体となった「統合型リゾート」(IR)の一部として設置されるようになってきています』
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