電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
電通の女性新入社員が「過労自殺」したことを受け、「オレの時代はもっと大変だった。いまの若い者は我慢が足りない」と思った人もいるだろう。上の世代にとっては“常識”かもしれないが、なぜそのような考え方をしてしまうのか。
ハラスメントにつながる思想
では、なぜ電通や東芝という立派な大企業に、在籍する人たちがそろいもそろって、こういうハラスメントにつながる思想に囚(とら)われてしまうのか。
いろいろな意見があるだろうが、個人的には、大企業に限らず、日本の組織の多くが、戦時体制下の組織を引きずっているからではないかと思っている。
そのあたりをシティグループ証券の藤田勉副会長が非常に端的に説明しているので、引用させていただく。
『戦時体制の影響は、今もなお、広範囲に残っている。所得税の源泉徴収、地方交付税、国民皆保険、厚生年金、9電力体制、経団連、新幹線も、戦時中にその原型ができた。同様に、年功序列、終身雇用制、系列・下請、メインバンク、天下り、行政指導のルーツは、すべて戦時体制である。戦後できた日本的経営の要因は、株主持合いのみである。それほど、戦時体制を出発点とする日本的経営は根が深いのである』(月刊資本市場 2015年5月)
このように日本社会全体が、戦時体制を引きずる中で、年功序列という組織に入った年次を基にした人事制度、上官の命令は絶対服従、所属組織への強い忠誠心、など旧日本軍の組織文化が、日本企業に引き継がれていったのは決して偶然ではない。「企業戦士」になんの疑問も抱かせず、「経済戦争」に没頭させるには、「軍隊」という戦争のための組織をモデルにするのが、最も理にかなっているからだ。
旧日本軍を真似たのだから当然、旧日本軍と同じ問題が生まれる。その中のひとつが、今回の女性社員が受けたとされる上司からのパワハラだ。
旧日本軍でも、「新兵いじめ」と呼ばれるパワハラが常態化していた。例えば、1944年に学徒出陣で、陸軍北部第178部隊に入った男性は以下のようなパワハラを経験している。
『就寝前、汚れてもいない銃を見て班長が「手入れがなっていない」と激怒。銃床で頭をこづかれ殴られた。新兵同士で殴り合いを強いられたこともある。自尊心を打ち砕くいじめもあった。軍人勅諭を言わされ、間違えた戦友は柱によじ登ってセミのまねをさせられた。「ミーン、ミーン」。今度は「鳴き声が違う」と罵声が飛んだ』(朝日新聞 2014年8月15日)
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