ARとウェアラブル端末で点検作業を支援 三菱電機が新技術
三菱電機が、インフラ設備の点検作業をARとウェアラブル端末を活用して支援する技術を開発。騒音が大きい環境でも記録できる音声認識と組み合わせ、ミスを防ぐ。
三菱電機は、ビルや発電所・鉄道など社会インフラのメンテナンス作業を、ウェアラブル端末と拡張現実(AR)を活用して簡略化するシステムを開発した。音声認識により、騒音がある現場でも音声で点検結果を記録できる技術も組み合わせ、作業員の負荷軽減とミスを抑制するのが狙いだ。
点検箇所が一目で分かり、口頭で結果を記録
作業員がゴーグル型のウェアラブル端末を着用すると、点検が必要な箇所と順序を、実際の設備上に重ねて表示するAR技術で強調し、点検もれを防止する。
点検手順のデータベースから、点検結果を確認する音声対話を自動的に生成。作業員がマイクから報告すると、音声認識により自動的に記録される。点検結果が正常値と異なっている場合や、点検漏れがある場合は、システムが音声で再確認を促し、ミスを防ぐ。
自社の強みと現場のニーズを組み合わせて開発
三菱電機は2015年1月、水道管工事の支援技術として、2次元画像をもとに、埋設された設備のイメージと地上の風景を重ねて3D表示するシステムを開発。また、同年4月には人間の音声をリアルタイムでテキストに変換する音声認識技術の正解率が90%を突破するなど、ARを活用したインフラ整備と音声認識技術の向上に注力してきた。
新システムはこうした技術を現場向けに適用したものだ。「昨今のウェアラブル端末やスマートフォン・タブレットの発展をふまえ、当社が培ってきた技術を作業員が現場で持ち歩けるアイテムに応用した方法を考えた」(三菱電機 情報技術総合研究所の竹内浩一副所長)。
ゴーグルの画面に表示するARの構築には、iPadなど3次元センサーを搭載したタブレットコンピュータのカメラを用いる。点検対象となる設備をさまざまな角度や距離から撮影し、専用のアプリに読み込むと、画像を一括で関連付けて3次元モデルを生成する仕組みだ。
音声認識にはディープラーニングを導入することによって「人間の声」と「現場の騒音」とを識別。騒音下での使用に耐えうる認識精度を実現したという。
「音の近さを認識する音響辞書、使用されている単語を認識する言語辞書の2種類によって確からしい数値を算出し、最も数値の高かったものを“言葉”として認識する方法をとっている」(三菱電機 情報技術総合研究所の石井純 音声・言語処理技術部長)
今後、音声の認識率のさらなる改善や、人間の移動に対するARの追従性の向上に取り組むほか、ゴーグルとヘルメットを一体化させたウェアラブル端末を開発し、3年後の実用化を目指すとしている。
関連記事
- 眼鏡型端末が花盛り 東芝が「Wearvue TG-1」発表 注目は“広視野”
東芝の「Wearvue TG-1」など、視認性や重量感を重視した眼鏡型ウェアラブル端末が「第2回ウェアラブルEXPO」に登場。 - ウェアラブル端末が「街角」より「工場」で普及する理由
今後の市場拡大が期待されるウェアラブル端末。いま、その市場は一般ユーザー向けよりも、製造や建設現場といったB2Bの分野で盛り上がりを見せているという……。一体なぜか。 - 東京五輪を“VR席”で見る時代がくる? VRが変える新しいテレビのカタチとは
近い将来、VRが今よりも普及したとき、映像コンテンツの楽しみ方はどのように変わっていくのだろうか――360channelが展開する「VRテレビ局」の可能性について、同社でプロデューサーを務める中島健登氏から話を聞いた。 - 2017年の「戦略的テクノロジートレンド」トップ10は?
米Gartnerが恒例の戦略的テクノロジートレンドを発表。2017年のトップ10とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.