「ロイホ24時間営業廃止」の正しい読み方:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
ファミレスの「ロイヤルホスト」が2017年1月までに24時間営業を廃止するという。大手マスコミは「外食産業の営業時間短縮は最新トレンド」といった感じで報じているが、ロイホの場合はちょっと違う。というのも……。
ロイホの先見性は「サイエンス」に基づく
海外の飲食店では、全席禁煙を実施したところ食事をする際に流れてくるタバコの煙を嫌う「新客」が訪れて、売り上げが落ちるどころか上がったという調査があり、事実、ロイヤルでも菊地唯夫社長(当時)が、2013年12月期の決算発表会で、「ロイヤルホスト全店で客席を禁煙とし、客数が増えた」(日本経済新聞 2014年2月15日)とおっしゃっている。
日本では「タバコが周囲の人の健康被害を損なうなんてのは世界の常識だ」「日本は特別なんだ、そんなもん知るか! 喫煙の自由を奪うなんてヒトラーみたいなもんだ」という激しい論争がなされているが、外食経営の観点では「食事を楽しむ」ということを目的としたレストランでは、「全席禁煙」にしたほうがプラスに働くという結論が出ている。それにいち早く目をつけ、導入に踏み切ったのが、ロイヤルだったというわけだ。
つまり、ロイヤルの先見性というのは、「時代を読む目」みたいな野生の勘のようなものではなく、あくまで調査や実験という客観的事実を分析した結果なのだ。
「ファミレスの父」と呼ばれ、水商売と言われたレストランを「外食産業」にまで成長させたロイヤル創業者・江頭匡一氏はかつて、このように述べた。
『食べ物とはカルチャー、産業はサイエンス。サイエンスの部分をいかに積み重ねていけるかで勝負は決まる』(日経ビジネス 1979年8月27日)
そして、自分たちの店は「カルチャーが25%、サイエンスが75%」だと言い切った。それまでの、飲食業はどうしても店主の「こだわり」などの精神性が全面に出るため、「個人事業」の域をでなかった。それを江頭氏は、数字やデータに基づく科学的な経営によって、「産業」へと押し上げたのだ。そんな「サイエンス」に基づく江頭流経営を実践し、シズラーを見事に再生したフードサービスコンサルタントの梅谷羊次氏も『月刊飲食店経営』(2014年9月20日)でこのように述べている。
『江頭氏の経営哲学は量を追わず「日本で一番質の高い飲食企業にする」である』
関連記事
- 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 日本人、それってオカシイよ 「過労死」を生む日本企業の“常識”
過労死の問題が話題になっている。この問題に対して、海外メディアはどのように報じているのか。「労働時間」「残業」「休暇の取得」などは常識の範囲内で行っているつもりかもしれないが、外国人からは“非常識”に映っているようだ。 - 電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ
電通の女性新入社員が「過労自殺」したことを受け、「オレの時代はもっと大変だった。いまの若い者は我慢が足りない」と思った人もいるだろう。上の世代にとっては“常識”かもしれないが、なぜそのような考え方をしてしまうのか。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.