“小さな高級車”幻想に挑むデミオとCX-3:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
マツダがデミオとCX-3の商品改良を行った。改良ポイントは大きく3つあるが、そもそもCX-3は単純にデミオのコンポーネンツを使っているというだけでなく、ボディも共用している。SUVでありながら室内高はデミオと変わらない。なぜそうしたクルマが作られたのだろうか?
ちなみに、試乗後、CX-3の主査に確認したところ、問題の症状は把握していた。「あれってタイヤの縦ばねですかね?」と聞くと「恐れ入りました」とのこと。別に筆者に恐れ入ることはないので、それより何より直してほしい。主査の受け答えを総合すると、問題の振動原因を1つずつ当たっていったが解決せず、現在、消去法でタイヤではないかと考えているらしい。ただ、タイヤそのものは自社で作るわけではないので、直したいのは山々だが、多少時間がかかるのだそうだ。
これまで書いた通り、CX-3には自動車業界の見果てぬ夢である小さな高級車を実現できる可能性がある。もしデミオのガソリンモデルと同等の乗り心地とハンドリングを実現できたら、少なくともランチア・イプシロンと並ぶくらいにはなれる。それは歴代トップタイということだ。
クルマと見栄とエンジニアリング。その3つは常に関連しながら変化し続けている。今回だって話は簡単なのだ。デミオのガソリンモデルなら、小さいのにかなり上質と言えるものになっている。そこに買う側の見栄の心さえなければ。
しかし、人はそうそういつも合理的にはなれない。やはり周囲から「安グルマ」と思われるのが嫌だから、「いや、これディーゼルだから」とか、そもそも外観が安グルマに見えないCX-3を選びたい。そういう人が根源的に持つアンビバレントを解決してあげることがCX-3の使命なのではないか?
CX-3には大きな期待をしている。そしてデミオのガソリンモデルにはもっと高い評価が得られるように祈っている。せっかくの良いクルマなのだから、実力なりに評価されるべきである。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
関連記事
- 「マツダ ロードスターRF」はロードスターなのか?
ロードスターRFの試乗を終えて戻ると、マツダの広報スタッフが「良いクルマでしょ?」と自信あり気に話しかけてきた。そんな新たなモデルを12月末に発売する。ロードスターとしてRFは異端と言えるだろう。 - 「常識が通じない」マツダの世界戦略
「笑顔になれるクルマを作ること」。これがマツダという会社が目指す姿だと従業員は口を揃えて言う。彼らは至って真剣だ。これは一体どういうことなのか……。 - マツダ・アクセラはマイナーチェンジじゃない
クルマは4年ごとにフルモデルチェンジ、その間の2年経過時にマイナーチェンジを行うのがお約束だったが、時代は変わりつつある。そんな中でマツダは「新車効果」を狙ってマイナーチェンジすることを止めるという。 - マツダの通信簿
先月末、マツダはサステナビリティレポートとアニュアルレポートを発表した。これはマツダ自身による過去1年間の通信簿とも言えるものだ。今回はそのレポートを基にマツダの現状を分析したい。 - マツダがロータリーにこだわり続ける理由 その歴史をひもとく
先日、マツダの三次テストコースが開業50周年を迎え、マツダファンたちによる感謝祭が現地で行われた。彼らを魅了するマツダ車の最大の特徴と言えば「ロータリーエンジン」だが、そこに秘められたエピソードは深い。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.