だから日本経済の生産性は「めっちゃ低い」:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
日本の1人の当たりのGDPが低い。「生産性が低い。もっと高めよう」といった話をすると、「日本人はチームプレーが得意なので1人当たりのGDPなど意味がない」といった反論も。なぜ科学的根拠のない意見が飛んでくるのか。その背景には、戦前からある「戦争学」が影響していて……。
「下に責任とリスクを押し付けるシステム」と決別できる
ご存じのように、先の大戦ではすさまじい数の日本兵が亡くなっており、その数は100万人をゆうに超える。しかし、その無謀とも言える作戦を立案し、指揮していた指導者層は、一定期間の公職追放や、「戦犯」のそしりを受けた以外、先ほども述べたように戦後の日本社会でしれっと新しい人生を謳歌している。
こういう戦時中の指導者層がつくりだした「日本型資本主義」はバブル崩壊を経て、「失われた20年」で完全に敗北をした。しかし、1億人以上という人口と、過去の遺産でなんとなくまだそれが露呈しない状態が続いているだけなのだ。
日本が先進国の中で唯一、経済成長をしていないのがその証左である。
アトキンソン氏の提言どおり、「上」にプレッシャーをかけて、時価総額向上を達成できない経営者をどんどんクビを刎(は)ねていけば、日本型資本主義という病におかされた経営者がどんどん駆逐される。社員や下請けという「下」に責任を押し付けて延命をはかるようなブラック経営者も当然あぶりだされていく。つまり、戦時中の「下に責任とリスクを押し付けるシステム」と決別することになるので、「1人当たり」の生産性もあがっていくのだ。
日本の生産性が先進国で最下位ということを前向きに考えれば、日本は先進国というポジションでありながらまだまだ成長ができる余地があるということだ。
マスコミには「日本はスゴい」「日本は世界一」という自画自賛的な論調が溢れているが、実は最も必要なのは、「日本はまだ先進国になりきれていない」という「謙虚さ」を説くことではないのか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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