営業に向いているのは人間ではなくロボット?:Pepper導入で売り上げ増加(2/2 ページ)
「Pepper for Biz」(法人向けモデル)の発売から約1年が経過した。販売台数は5000を超え、さまざまな場所でPepperを見かけるようになったが、導入企業にはどのような効果が出ているのだろうか。ソフトバンクロボティクスの事業推進本部、吉田健一本部長に話を聞いた。
介護業界で意外な反響
――介護業界でPepperの活用が進んでいると耳にしました。なぜでしょうか?
吉田: 確かに、かなり大きな市場になっています。介護現場でヘルパーさんが利用者相手に行う「レクレーション」や「お話し相手」をPepperに任せたところ、人間よりもエンゲージメント率が高かったそうです。
つまり、これまでは一緒に体操をやってくれなかったり、話かけても無視されることの方が多かったそうですが、Pepperにはきちんと反応してくれるというのです。
また、介護業界は人手不足です。1人1人とゆっくりお話する時間はなかなか作れません。Pepperなら顔認証機能もあるので、その人の名前を呼んで話かけることができます。利用者はそれを喜んでくれていて、孫のように可愛がってくれていると聞いています。
こうした事例が多くの介護施設で生まれていて、Pepperの導入が進んでいます。実は、こうした活用法や、効果については当社としても想定外でした。
――先ほど、ロボットに接客されたい人が多いという話がありましたが、介護も同じように「人間よりもロボットに介護されたい」というお年寄りが多いのでしょうか。
吉田: そうですね。介護される側もプライドがありますし、恥ずかしいという気持ちもあります。また、ヘルパーさんに気を遣う人もいるでしょう。そういう点では「ロボットの方が接していて楽」という利用者も多く、そのためエンゲージメント率が高くなっているのかも知れませんね。
ちなみに、夜は深夜徘徊(はいかい)を防止するための見守り役として活用されています。セキュリティカメラが「止まってください」と呼びかけても歩くのを止めてはくれませんが、Pepperが話かけると会話をして立ち止まってくれるので助かっているそうです。
――今後のPepperはどのように進化し、活用されていくのでしょうか
吉田: Pepper(ロボット)の強みは人にはできないことができると言う点です。例えば、人間がお客さんの顔と名前を覚えられる人数はせいぜい200人くらい。ロボットなら何人でも覚えられるし、年齢や性別、購買履歴なども分かる。AIやIoTと連携することでより個人にあった営業支援ができるようになるでしょう。
介護においても、データを蓄積することで過去の会話の内容から利用者の趣味嗜好を学習するだけでなく、その人の表情や声から精神・身体状態を理解できるようになっていきます。Pepperが取得した情報を共有することで、ヘルパーさんも適切な対応を迅速に行うことができるようになり、業務負荷も軽減されていくはずです。
現在のPepperは“バイト1年目”の活用範囲ですが、今後はよりできる仕事の幅が増え、仕事の質が高まっていくでしょう。その分、Pepperの活用が加速していくと自信を持っております。
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