「望みを捨てぬ者だけに」 真田丸と管理職:不利なときこそ次の一手を(2/2 ページ)
高視聴率を維持したNHK大河ドラマ『真田丸』。「望みを捨てぬ者だけに道は開ける」という言葉が繰り返され、視聴者の共感を呼んだといわれますが、真田幸村は「望みを捨てぬ」だけだったのでしょうか?
2.「捨てなかった」だけではない
不利な豊臣勢を率いる幸村の行動は、望みを捨てなかっただけではありません。圧倒する徳川軍の布陣の前でも希望を捨てず、出城を築いて攻撃を仕掛け、敵の弱点に向けてゲリラ戦を行い、影武者も交えて大将家康を狙うなど、攻撃の手を緩めません。つまり不利な戦況にのまれることなく行動できたことこそ幸村の凄さです。
ここは作戦行動においてとても重要です。戦争は単純な戦力差だけで勝敗が決まるのではありません。古来ゲリラ戦など、少人数で大軍を打ち破る戦闘はいろいろありました。その際に重要なことはモラール(士気)です。
ただ単にポジティブな思考で戦いに勝つことはできませんが、劣勢に立てば冷静さを失い、打てる手があっても気後れしたり、決断が鈍ったりするのが人間の性。味方の内紛を煽る徳川勢の調略は、もともと信玄の眼と呼ばれた、真田昌幸が得意とする戦法でした。昌幸の息子である幸村はこうした流れの転換についても学んでいたのかもしれません。
戦いは必ず流れがあります。敵が優位に見えても乾坤一擲(けんこんいってき)の逆転のチャンスはあり得る訳で、次々と策を打っていく指揮官に兵士は士気を燃え上がらせます。望みを捨てないという受け身なことではなく、自ら道を開いていったから「道は開けた」という、当たり前のことなのかもしれません。しかしそんなことが実現できた武将は決して多くはないのです。
3.格言「兜町は明日もある」
株の格言はビジネスの時機も現しています。「トランプ氏が大統領になれば超円高」とほとんどの評論家が言っていたように、後講釈ではいかようにも説明はできます。しかし上がったり下がったりするのは株や為替の相場だけではなく、ビジネス環境のすべてだともいえます。
良いときも悪いときもあるのです。分かっていても悪い目で気落ちしてしまうのが人間。しかしそうした人間心理の本質の裏を行った幸村の姿勢は、戦略観として正しいといえます。またそれは単に天運や偶然、他人の助けを待つようなものではなく、気持ちに負けずに次の手を着々と打っていったその姿勢にあるといえるでしょう。
良いときは周囲がいかようにもチヤホヤしてくれます。しかし落ち目になったときにいかに行動できるか、「望みを捨てぬ者だけに道は開ける」とはそうした教訓なのだとあらためて思います。
指揮官は現代でいえば管理者です。時流に流され、士気を考えないのは指揮官の資格がありません。ダメなときでも望みを捨てさせない、そのために次々と手を打たせることができることは、管理者にとって極めて大切な素養だと思います。(増沢隆太)
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