「働き方改革は手段」日本電産、過去最高の営業利益:“元旦以外は休まない”からの大転換
「モーレツ」社風から一転、働き方改革に取り組む日本電産。1月24日に発表した2017年3月期第3四半期の決算は、減収なるも大幅増益で、営業利益は過去最高だった。業績を引き上げる改革とは?
「モーレツ」社風から一転、働き方改革に取り組む日本電産の好調が続いている。
日本電産は、「20年に連結売上高2兆円、営業利益3000億円」の目標を掲げている。その柱となるのが車載事業と家電・商業・産業用事業で、事業強化のために技術者の中途採用、抜本的な業務効率化、海外工場での機械化推進、女性の積極的登用、社員力の向上、残業を減らす働き方改革など、さまざまな施策を推し進めている。
マイクロ・マネジメントで利益率改善
永守会長は、「マイクロ・マネジメントを徹底し、収益を改善する」と語る。マイクロ・マネジメントとは、改善のアイデアを逐次実行していく「井戸掘り経営」、収入に見合う生活をする「家計簿経営」、大きな問題を小さなポイントから解決していく「千切り経営」だ。
この3つの手法を意識しながら、各事業セグメントにおいて、PDCAサイクルを回しているのだという。その結果、9カ月で各事業の利益率が15%以上に改善。唯一達していない車載事業も、1年間で6%から13%程度に改善されている。
例えば、家電・商業・産業用事業の子会社では、60%を超えていた材外費率に注目。海外生産事業所の人員を合理化、スケールメリットを活用した原価低減、部品の内製化や現地調達化推進などの施策を随時行っていった。積み重ねが功を奏し、15年上期には10%弱だった営業利益率は、2年間で目標の15%を超えたという。
利益を出すための“働き方改革”“人材投資”
永守重信会長兼社長はかつては「元旦しか休まない」と語っていた“モーレツ”経営者だったが、16年に大きく舵を切り替えた。「残業ゼロ」を目指し、効率を上げるために設備を改善。会議の短時間化も仕組みから変えた。
「働き方改革は、目的ではなく、生産性を上げて利益を改善するための手段。これまでと正反対のことをやっているが、今だからこそ効果が表れている」(永守会長)
日本電産は、大手メーカーから流出した優秀な技術者獲得に力を入れているが、それだけではなく新卒採用にも意欲を燃やしている。
「新卒採用を進める上での最大の問題は、日本電産が時価総額3兆2000億円のわりに知名度が低いこと。優秀な学生に来てもらうには、分母を広げなければいけない」(永守会長)
そのために、1973年の創業以来初のTVコマーシャルを開始。俳優の佐々木蔵之介を起用し、広告宣伝費2億円を投資した。「やるときは徹底的にやる。効果は必ず出てくる」と永守会長は決算会見で語る。
利益率改善のために投資を続ける日本電産――。1月24日に発表した2017年3月期第3四半期の決算は、売上高8682億2800万円(前年同期比3.0%減)、営業利益1061億9700万円(17.6%増)と、減収なるも大幅増益。営業利益、税引前利益、純利益の各項目で過去最高を更新した。同社は通期の業績予想を第2四半期に続いて上方修正。営業利益を1350億円から1400億円としている。
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