カシオのスマートウォッチ、開発の裏で何があったのか:長年の苦労乗り越え商品化(2/4 ページ)
2016年春に、カシオ史上初のスマートウォッチ「WSD-F10」が発売された。アウトドアファンから高い支持を集める同製品を手掛けたのは、新規事業開発部 企画管理室の坂田勝室長だ。数々の失敗があったというが、どのようにして商品が生まれたのだろうか。
「2号機」の評価は?
これまで注力してきた新商品のコンセプトが白紙に戻ったが、坂田さん率いるプロジェクトメンバーは諦めることなく、すぐさま新たな試作機の開発に取り掛かった。
「失敗を生かし、2号機ではデバイスのコンセプトを『ランニングで使えるスマートウォッチ』に定めました。1号機からスポーツでは不要なマイクを外し、汗をかく環境下での使用を想定して防水性能を高めるなど工夫を重ね、2号機を完成させました」
しかし結果的に、2号機も商品化にはつながらなかった。機能を絞り込んだはずだったが、多くのスマホ用アプリが動く環境や、カラー液晶などベースは1号機のまま。一方、ターゲットとして想定していたランナーは、走るルート、心拍数、消費カロリーをリアルタイムで知るために最低限の機能を求めていた。
そのため、経営層は、スマートウォッチの機能とニーズとの乖離(かいり)が依然として大きく、より安価でシンプルなデバイスには勝てないと判断したのだ。2号機が日の目を見ることはなく、開発チームは予算の見直しが検討されるなど厳しい状況に追い込まれた。
原点回帰して“3度目の正直”を目指す
13年9月。他社に先駆けて開発を始めたにもかかわらず、試行錯誤を繰り返すうちに2年あまりが経過していた。ウェアラブルデバイスはトレンドとなりつつあり、スマートウォッチを手掛ける企業は続々と増えていた。また、米Appleが「Apple Watch」を発売するという噂が広まっており、もしカシオがスマートウォッチを発売したとしても、市場では厳しい戦いが予測されていた。この時期について、坂田さんはこう振り返る。
「“3度目の正直”として商品化を成功させたかったので、もう失敗は許されません。その後は、着想を原点に戻して、『本当に便利なスマートウォッチとは何か』をチームメンバーとひたすら考えていました。結果、『スマホが使いづらい場所で、ユーザーをサポートするもの』という結論に至りました」
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