カシオのスマートウォッチ、開発の裏で何があったのか:長年の苦労乗り越え商品化(4/4 ページ)
2016年春に、カシオ史上初のスマートウォッチ「WSD-F10」が発売された。アウトドアファンから高い支持を集める同製品を手掛けたのは、新規事業開発部 企画管理室の坂田勝室長だ。数々の失敗があったというが、どのようにして商品が生まれたのだろうか。
17年春には新製品も
17年4月発売予定の新作「WSD-F20」は、よりコアなユーザーのニーズに応えるため、新たにGPSを実装。Wi-Fi経由で地図をダウンロードすることで、現在地が分かるようになった。スマホと連携させなくても、自分の居場所が分かる仕組みだ。
ウェアラブル市場は「今後も成長する」
前作で成功を収めたにもかかわらず、このように技術を刷新し、ニッチな層への訴求を続ける理由は、今後のウェアラブル市場が細分化すると予測しているからだという。
「昨今、『ウェアラブル市場は伸び悩んでいる』という指摘が増えていますが、それは私たちが試作機で失敗したような“万能型”デバイスの人気が落ちているから。一方で、用途が明確なデバイスの売り上げは少しずつ伸びています。他社の動きを見ていても、ファッション、フィットネス、決済など、何かに特化した製品を出す企業はファンを獲得しやすい傾向があります。今後は、この方向で各社が競い合い、市場を確立していく段階に入ると考えています」
企画のヒントは身近な所にある
苦しい時期を乗り越えてスマートウォッチの商品化を成功させ、ウェアラブル市場での生き残りをかけて今も商品開発を続ける坂田さんは、仕事への取り組み方について「基本はポジティブシンキングが第一。たとえ経営層に怒られてもへこたれず、『絶対に乗り越えられる』という気持ちを持っています」と話す。
坂田さんは「何気ない日常生活の中にこそ、大切なヒントが潜んでいる」と考えている。ビジネスで新たなアイデアを考える際は、インターネットで検索したり、書籍を読んだりと、外部に情報源を求めることも必要だ。だが、それだけではない。坂田さんが「アウトドア」というプロジェクトメンバーの趣味の中から答えを導き出したように、成果を生むためには身近な物事にアンテナを張り巡らすことも重要になりそうだ。
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