それでも東急沿線に暮らしたい人は多い:常に完璧を目指す(1/3 ページ)
東急沿線の中でも田園都市線の混雑は厳しい。それでも、多くの人がこの沿線に暮らす。その理由は……?
東急沿線の中でも東横線や田園都市線は、家賃や住宅価格が高いといわれている。一方で、特に田園都市線の朝ラッシュ時の混雑は厳しくて、ピーク時の池尻大橋から渋谷までの区間は混雑率184%となっている。これは、首都圏の大手民鉄では最も高い数字だ(注:東京メトロは除く。東京メトロのもっとも高い混雑率は、東西線の木場〜門前仲町間、199%である)。
混雑の影響を受け、田園都市線はラッシュ時の「急行」の運行を止めてしまった。「準急」として、二子玉川から渋谷までの間は各駅に停車することにした。そうでないと、列車が詰まってしまうのだ。
それでも、田園都市線沿線に暮らしたいという人は多い。ラッシュゆえにこの地を去ろうとする人は少ない。なぜか。東急沿線の暮らしは、心地いいからだ。
東急沿線の暮らしとは
東急沿線で暮らすと、あらゆるサービスが東急によって供給されていることが分かる。鉄道だけではなく、不動産、スーパー、百貨店なども手掛けている。スーパーにいたっては、駅周辺住民の所得階層に合わせて、一般向けのスーパー「東急ストア」と高級スーパー「プレッセ」を使い分けているのだ。
もちろん、東急沿線での消費生活が便利なように、クレジットカードもある。PASMO機能を備えているだけではなく、JALのマイレージも貯められる。
その上東急は、ケーブルテレビなどの情報インフラや、電力などのインフラをも持っている。電力の自由化により、家庭用の電力事業に参入してきたのだ。
家でも、東急なのである。
もともと東急は、住宅のための土地を販売する会社だった。そのため、土地をどう扱うかについてはノウハウがある。そして、東急の持てる能力と理想をすべて注ぎ込んだのが、田園都市線のニュータウン計画なのだ。
昨今、ニュータウンはもうダメなのではないかという声が高まりつつある。しかし、東急のニュータウン・多摩田園都市は活気を失っていない。
住民が鉄道を使うという前提でニュータウンをつくり、そこで理想の暮らしを営めるようにする。それが、東急なのだ。
関連記事
- なぜ時刻表に“謎ダイヤ”が存在するのか
鉄道の時刻表を調べる際、スマホで検索している人が多いだろうが、実は紙の時刻表をじっくり見ると、興味深い情報がたくさんある。例えば、実際に走っていない特急が走っていることも。どういうことか。『JTB時刻表』の大内編集長に、謎ダイヤの真相を聞いた。 - 国鉄を知らない人へ贈る「分割民営化」の話
4月1日にJRグループは発足して30周年を迎えた。すなわち、国鉄分割民営化から30年だ。この節目に分割民営化の功罪を問う論調も多い。しかし、どの議論も国鉄の存在を承前として始まっている。今回はあえて若い人向けに国鉄と分割民営化をまとめてみた。 - 鉄道ファンの支持を集める「京浜急行」の秘密
京浜急行が、沿線住民のみならず、鉄道ファンの支持も集めている。その理由は、同社の独自性にあるようで……。 - 電車が遅れたらカネを返せ、はアリか?
ちょっと前の話になるけれど、参議院議員が「電車の遅延度に応じて料金を割り引く制度を提案する」とツイートして失笑された。遅延へのいらだちはごもっとも。しかし、失笑された理由は「目先のカネで解決しよう」という浅ましさだ。 - 東京の「地下鉄一元化」の話はどこへいったのか
東京の地下鉄一元化は、2010年、石原慎太郎都知事時代にプロジェクトチームが発足し、国を交えて東京メトロとの協議も行われた。猪瀬直樹都知事が引き継いだ。しかし、舛添要一都知事時代は進ちょくが報じられず今日に至る。この構想は次の知事に引き継がれるだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.