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なぜ前川さんは「出会い系バーで貧困調査」という苦しい釈明をしたのかスピン経済の歩き方(4/4 ページ)

前文科省事務次官・前川喜平さんの発言に、日本中がなんとも言えないモヤモヤした空気に包まれた。「出会い系バー」に通っていた理由について、「女性の貧困について、ある意味実地の視察調査の意味合いがあった」と釈明したからである。なぜ前川さんはこのような発言をしたのか。

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支離滅裂なロジックを言ってしまう

 菅義偉官房長官が言っているように、自民党文教族がガッチリガードしていた岩盤規制に勇ましく切り込んだのは、旧民主党政権である。そして、それを応援していたのが、今回うれしそうに「総理のご意向」スクープを放った朝日新聞である。民主党本部の陳情要請対応本部に、愛媛県の民主党県連から「今治市で獣医師養成系大学を設置するための規制緩和」という要望があがってくる少し前、朝日はこんな援護射撃をしている。

 「獣医師の定員を定める20都道府県のうち12の都県で定員割れとなっていた。北海道で51人不足し、岐阜県で18人、鹿児島県で10人、新潟県で7人足りない。薬剤師や臨床検査技師が獣医師の仕事の一部を肩代わりしている県も複数もある」(朝日新聞 2010年6月10日)

 こんな調子で、「獣医学部新設」をたきつけていた両者が、それを実現した安倍政権を目の仇(かたき)にして叩くというのは、ハタから見ていてあまり気持ちのいいものではない。政権批判のためのポジショントーク感がこれでもかというくらい伝わってくるからだ。

 霞ヶ関の論理で言えば、安倍首相が「行政をゆがめている」のは間違いない。そこにお友だちが関係していることが確かならば、さっさっと首をとればいい。

 だが、ひとつ忘れていけないのは、霞ヶ関の中でも、特定業界にすりよって行政をゆがめている人々がいるということだ。そういう人たちを見抜くポイントが「面子」である。

 既得権益でがんじがらめになった「ムラ」の住人は、自分たちの世界のロジック、自分たちの世界のルールに固執する。そういう内向きの「面子」を守るために、国民の常識とかけ離れたおかしな言動をする。そんな「ムラ人」たちが霞ヶ関にはウジャウジャいるのだ。

 文科省トップが「出会い系バーで貧困調査」という支離滅裂なロジックをしれっと言ってしまうということが、そんな日本の現実を如実に示している。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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