プレミアムフライデーは何がいけなかったのか:常見陽平のサラリーマン研究所(1/3 ページ)
プレミアムフライデー(笑)。今となっては、口にするのも恥ずかしい。これほど皆がこの施策にノッてこれないのは筋が悪かったからではないだろうか。いや、そもそもムリゲーだったというのが、私の見解である。
「プレミアムフライデー」とつぶやいてみていただきたい。SNSへの投稿ではなく、ちゃんと口に出してみよう。なんだろう、この恥ずかしい語感は。最近、西日本限定での販売に移行したスナック菓子「カール」を食べた後のような食感だ。歯にモノがつまり、さらにはチーズ味が口中に広がっているかのような。
「あれ、そういえば、今日ってプレミアムフライデーだったんですね」
5月26日(金)の夕方、私は全国紙の記者から取材を受けていた。その記者はこう言った。すっかり忘れていたようだった。あくまでサンプル数1の話ではあるものの、情報で食べている人が忘れるくらいだから、この施策の白けっぷりがよく分かるこの施策の白けっぷりがよく分かる(ちなみに、本コラムの担当編集S氏は、当日18時に社内会議があったそうだ)。
その晩、私はセミナーで講演した後、AbemaTVのニュース・バラエティ番組「AbemaPrime」のプレミアムフライデー特集に出演した。この施策の偽善っぷりに怒りがこみ上げてきて、机を叩いて暴れてしまった。
プレミアムフライデー(笑)。今となっては、口にするのも恥ずかしくなっていないか。SNSなどに「今日はプレミアムフライデー」などと投稿する様子に、何かこう意識高い系の臭いというか、香ばしさを感じてしまうのである。
いや、遠慮して投稿していない人もいるだろう。「プレミアムフライデーだぞ」などと言って、ビールを飲んでいる写真を載せると、「もっと働けよ」とか「金持っているんだなあ」なんてツッコミがきそうだ。
本来はプレミアムフライデーは、「早めに帰って遊びましょう!」というコンセプトであり、休むこと、消費をすることを推奨する企画のはずだ。人を動かすためには、何かムーブメントが必要だという話になるわけで、その一環だったわけだ。しかし、これほど皆がノッてこれないのは筋が悪かったからではないだろうか。
月末の金曜日というのも理解できない。営業の追い込みだ、締め日だと忙しいのは明らかである。1週間前倒しした方が給料日前後で消費しようという気にもなるのではないか。
なんといっても、効果測定の指標が明確ではない。いや、もっというと、測定が困難なのだ。仮に消費が上がった風に見えても、さまざまな指標を見ないと正確には判断できない。何に対してお金と時間が流れたのかを検証しなくてはならない。
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