なぜ「ヒーローもの」の主人公に、社長が少ないのか:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
日本の映画や漫画に登場するヒーローをみると、「社長」や「大富豪」が少ない。米国の作品には多いのに、なぜ日本では少ないのか。その理由は……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
先日、六本木ヒルズで開催されている「マーベル展 時代が創造したヒーローの世界」を見に行ったところ、その盛況ぶりもさることながら中国人観光客の多さにびっくりした。
わざわざ日本にやって来てまで米国映画のキャラクターを見物するなんて物好きな連中だな、とあきれる方もいるかもしれないが、実はこうなってしまうのには理由がある。
マーベルがこれでもかというくらい中国市場へ猛アピールをしているからだ。
ご存じのように、いまや中国は米国に次ぐ世界第2位の映画市場であり、ここでヒットをしないことには巨額の投資を回収できない。それはディズニー傘下のマーベルスタジオとて例外ではなく、これまでも中国人の心をつかむために涙ぐましい努力を行なってきた。
例えば、2013年に公開された『アイアンマン3』の悪役マンダリンは、原作では中国の犯罪結社のリーダーという設定だが、映画では「国籍不明のテロリスト」となっていた。さらに、国内の検閲をスムーズに通過するためという名目で、通常版よりも3分ほど長い「中国版」を製作して、中国人キャストの登場シーンや、中国の風景を増やしたのだ。
また、2017年1月には香港ディズニーランドに「アイアンマン・エクスペリエンス」というアトラクションがオープンして人気を博している。さらに、2023年にはマーベルヒーローのアトラクションができることからも、ディズニーのグローバル戦略で「マーベル」というコンテンツが、日本より中華圏での人気獲得に重きを置いているのは明らかだ。
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