東急の“時差Biz特急” 多摩田園都市通過の本気度:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
東急電鉄が田園都市線の早朝に特急を新設・増発する。その名も「時差Bizライナー」。小池都知事が提唱する“時差Biz”に対応した列車だ。都議会選挙期間中の発表はあざといけれど、ダイヤを見ると神奈川県民向けサービスになっている点が面白い。
時差Bizライナーの追い越し駅はどこか
時差Bizライナーの運行は8日間で平日限定とあって、ダイヤ改正までの大事には至らない。しかし過密な通勤路線にとって、列車を1本増やすことは、前後の列車にも影響がある。ダイヤを追ってみよう。時差Bizライナーは中央林間発午前6時4分で、渋谷着6時43分。この列車の前に3本の各駅停車がある。中央林間発5時51分、渋谷着6時52分。中央林間発5時59分、渋谷着6時55分。鷺沼発6時17分、渋谷着6時45分。
これらは時差Bizライナーより先に走り、時差Bizライナーより後に渋谷に着く。つまり、途中で追い越さなくてはいけない。インターネット時刻表「えきから時刻表」のデータをもとにダイヤを描いてみた。
駅の設備も併せて勘案すると、最初の追い越し予想駅は江田だ。中央林間発5時59分の各駅停車はここで追い付かれる。追い越されるためには停車時間を長く取る必要があるため、現在長津田駅で3分となっている停車を2分短縮し、各駅の時刻を2分繰り上げ、その2分を江田で使うことになりそうだ。
次の追い越しは鷺沼、あるいは梶が谷だ。中央林間発5時51分の各駅停車は梶が谷発6時29分。時差Bizライナーは次の溝の口発が6時29分。どこかで追い越さなくてはいけない。この各駅停車は鷺沼で3分停車している。この間に大井町線の急行に追い越される。この停車時間を延長して、次の時差Bizライナーの通過待ちをする。
あるいは大井町線急行を追って早めに発車して、梶が谷まで時差Bizライナーから逃げ切るか。はたまた梶が谷駅で発車時刻を繰り下げて通過待ちをするか。ただしこれをやると、半蔵門線の運行間隔を乱す。鷺沼で大井町線の急行発車時刻を繰り上げ、梶が谷まで逃げ切りそうな気がする。実際はどうか確かめたくなってきた。鉄道ファンの血が騒ぐ。
3本目の追い越しは桜新町だ。地下線内はここしか追い越す場所がない。鷺沼発6時17分の各駅停車は現在、二子玉川で3分停車している。これを1分停車に短縮し、桜新町駅に2分早く着く。そこで2分遅く発車して時差Bizライナーを先行させる。いずれにしても、運行本数が増え始める時間帯であり、先行する各駅停車に追い付きそうになって、追い越し駅までは続行運転だ。中央林間駅から渋谷までの所要時間は39分。通勤時間帯の急行(所要時間41分)より速いけれど、日中の急行(同35分)より遅い。
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