ベビー用品のピジョンが圧倒的シェアを獲得できる理由:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(2/4 ページ)
ベビー・ママ用品メーカーのピジョンが開発する哺乳器などが売れている。しかも国内だけではない。世界各国にマーケットを拡大しているのだ。その強さの秘密とは何だろうか?
山下: 海外のビジネスで成功する要因は2つあると考えています。1つはブランドで、もう1つはディストリビューション。
国内や中国もそうですが、直販体制ではないため、販売代理店網をどう作るかが成功のカギを握ります。ただし、それができてもブランドが認知されていなければ意味がありません。ブランドの信頼性を高めるためは商品やサービスの質が重要です。
では、お母さんたちはどうやって哺乳器の購買を決めるのだと思いますか? 国内、海外問わず共通するのは、医師や看護師の推奨です。病院で使われている製品は信頼が増すので、ピジョンは病院への普及活動に力を入れました。
加えて、中国では政府との取り組みによって母乳育児を推進しています。単に哺乳器だけではなく、母乳育児を推進するメーカーとしての立ち位置をとりました。アフターサービスを充実させ、育児の悩みや困りごとなど、商品以外の相談にも乗っています。こうした顧客とのダイレクト・コミュニケーションが効いてきています。
競合と比べて商品群の幅広さも差別化ポイントになっています。育児全般をトータルでカバーできるメーカーはあまりないです。そして常に新しい価値を持った製品を出すべく、商品開発には力を入れています。ピジョンの「開発力」は基礎研究、行動観察力、デザイン力という3つの柱から成り立っており、これが他社にまねのできない当社ならではの価値を提供する力(コアコンピタンス)の源泉となっています。
大薗: 病院へのアプローチは国内での取り組みに原型があると思いますが、日本と中国を比較したときの共通点は何ですか? 中国独自のものはありますか?
山下: 病院とのつながりに関して、日本より中国の方が強いです。中国の衛生省が推奨している「母乳育児相談室」は10年以上も前からパートナーに認定されています。この相談室は、中国の各省にある大きな病院に設置されていますが、他社が同じことをやりたいと思ってもできないことです。さらに、病産院での医療従事者向けの勉強会を実施するなど、取組を深化させています。
大薗: 国レベルの役所に認定されると、全国の病院に導入できるのですか?
山下: あくまでも母乳育児の相談室なので、哺乳器などの商品はいっさい陳列できません。ただ、ピジョンのロゴが大きく入ったポスターは壁に飾ったりはできます。
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