小さな定食屋に“お手伝い”が全国から集まる理由:目指すのは外食のオープンソース化(1/5 ページ)
東京・神保町にある小さな定食屋「未来食堂」。この未来食堂には年間で約450人もの“手伝いさん”が国内外からやって来るという。一体なぜなのか。オーナーの小林せかいさんに話を聞いた。
東京・神保町の駅から徒歩3分程のところにある定食屋「未来食堂」――。カウンターに12席あるだけの小さな店だが、2015年の開業当初から従来の飲食店の常識を覆す効率的な運営手法が話題となっている。
どんな運営手法なのか、簡単に説明しよう。未来食堂のランチは日替わり定食の1種類だけ。そのため、オーダーをとる必要がなく、提供スピードも圧倒的に早い。客が席についてから1分以内に料理が出てくる。忙しいビジネスパーソンなどからは使い勝手が良いと評判で、リピーターが多いという。また、店側としても、その日に使う食材が絞られるためロスが少なくて済むメリットがある。
「日替わりとはいえ、メニューが1種類だけでは飽きられるのでは?」と思われたかもしれない。実は、未来食堂では同じメニューを再び提供することがない。ハンバーグや卵焼きといったいわゆる“王道”の定食メニューについては繰り返し提供するが、それでも2カ月以上の間隔が空く。基本的には、毎日新しいメニューを楽しめるのだ。
また、ディナータイムは、日替わり定食に加え、おかずを自由にオーダーメイドできる「あつらえ」というシステムを提供している。メニューの代わりに用意された「本日の冷蔵庫の中身リスト」の中から食材を選び、自分オリジナルの定食を食べることができるのだ。こうした斬新な発想で客の人気を集めており、開業以来、黒字経営を続けている。
注目されている理由はこれだけではない。本題はここから。
未来食堂は従業員を1人も雇っていない。店を回しているのはオーナーの小林せかいさんと、“お手伝いさん”だけなのである。未来食堂には、50分間店の手伝いをすると、1食が無料になる「まかない」という仕組みがあり、このまかないを利用する「まかないさん」によって日々の運営が回っているのだ。
しかも、小林さんによれば、まかないさんが店に来ない日はほぼなく、国内外から年間で約450人が手伝いに来ているという。
一体なぜ、小さな定食屋に多くの人が手伝いに来るのだろうか。その秘密を、小林さんに話を聞いた。
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