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日本発・次世代ディスク「Archival Disc」で進む中国のデジタルアーカイブ山谷剛史のミライチャイナ(3/3 ページ)

ソニーとパナソニックが共同開発した業務用光ディスク規格「Archival Disc(アーカイバルディスク)」。中国ではデジタル化が進むのに伴いアーカイブ需要も拡大しており、光ディスクの利点を武器に、中国各地での導入が期待できそうだ──現地に詳しい山谷氏のリポート。

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 とはいえ政府系メディアが何もしないというわけではない。人民日報は「中央厨房」という名の、映像撮影、編集、配信、保存から配信後のネット世論のチェックまでできる「メディアコントロールセンター」のコンセプトを提案している。

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映像の編集からネットの反応チェックまで行える「中央厨房」

 コンセプトの実際の構築は、映像ソリューション大手の「中科大洋(Dayan)」が担当している。中科大洋はこれまで30年近くにわたって映像業界向けシステムを、顧客のニーズにあわせてカスタマイズしており、先日ソニーのOptical Disc Archiveを中国大手放送局にも納入した実績がある。またMAMシステム(メディア資産管理システム)についてはパナソニックのアーカイバルディスクを採用したシステム「freeze-ray」を採用した。中央厨房は「入口から出口まで全てを扱える」のが目的だ(顧客によりニーズは異なるので、メディア企業によりシステムは異なることから、Freeze-rayが必ず導入されるわけでもないことは補足しておく)。

高まるデジタルアーカイブ需要

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「中央厨房」説明会で展示されるパナソニックの「Freeze-ray」

 中国政府によるビッグデータ(大数据)普及を促す計画「促進大数据発展行動概要」では、治安工場や、政務サービスの改善、誰でも創業可能な社会システムの構築、経済運行メカニズムの構築など、中国が発展するための国家ビッグデータプラットフォームのほか、各地でデータセンターなどの基礎インフラを構築しようとしている。

 具体的には2017年内に、各部門のデータシェアの範囲と使い方を決定し、2018年までに中央政府のプロジェクトについて全国統一のプラットフォームを完成。20年までに信用、交通、医療、就業、社会保険、地理、文化、教育、科学技術、農業、気象、金融などあらゆる民生向け政府サービスについて社会に開放──と、3段階に分けて目標を設定している。

 また博物館のデジタルデータ化についても中国政府は目標を定めた。中国文物局、科学技術部、情報省に相当する工業和信息化部などは、事物のデジタルアーカイブ化と活用を目指す「インターネット+中華文明 三年行動計画」を発表。この計画では、19年末までに歴史的や芸術的などの事物情報をデジタル化し、公共の場にシェアできるようにすることを目標に掲げている。

 そのために第三者的な企業も各博物館と協力し、事物の画像データや音声データ、それに3Dモデリングデータと作成し、それらを動画、音楽、ゲームなどに活用することを政府は推奨。具体的に、EラーニングやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、3Dプリンターやスマートデバイス用アプリに活用することが明記されている。

 既に中国でアーカイバルディスクの引き合いがある上、19年までの「インターネット+中華文明 三年行動計画」、20年までの「促進大数据発展行動概要」の第3段階の目標に合わせ、中国各地の博物館や政府関連施設がデジタルアーカイブの構築に向けて動き出し、アーカイバルディスク用機器導入がさらに期待できそうだ。

 中国では作れない規格の製品が、中国の国家計画とともに、広大な中国の各都市で導入される。海外企業にとって壁が高くなったと思われる中国でも、日本企業が活躍できるこんな道がある。

筆者プロフィール:山谷剛史

 フリーランスライター。一時期海外アジア経済情報を配信する「NNA」に在籍。 中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強く、連載記事執筆ほか、講演や メディア出演など行う。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイド ウェブからの独立」(星海社新書)、「新しい中国人〜ネットで団結する若者た ち」(ソフトバンク新書)など。


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