「シャドウバース」が海外でスタートダッシュできたワケ:現地に最適化したプロモのコツ(2/2 ページ)
Cygamesのゲーム「シャドウバース」が、韓国・台湾展開でスタートダッシュに成功している。そのワケは、現地に最適化したプロモーション。スマホゲームの各国の流行やプロモのコツを聞いた。
シャドウバース、実際にどうだった?
「シャドウバース」は積極的な多言語展開をしているゲームだ。16年6月には日本版と英語版を同時リリース。17年2月に韓国語版、5月に繁体字版、7月にはフランス語版やイタリア語版、ドイツ語版をリリースした。金さんは現状について「苦戦している市場はあるが、韓国と台湾ではスタートダッシュができました」と語る。リリース直後のセールスランキングでは韓国17位、台湾13位に食い込んだ。
スタートダッシュが成功した要因について、金さんは「『神撃のバハムート』IP(知的財産)の土台があった」と語る。韓国版を展開している「神撃のバハムート」や、翻訳版をリリースしてはいないものの、現地で非常に人気がある「グランブルーファンタジー」のキャラクターが、「シャドウバース」には多数登場しているのだ。
海外展開の際、ゲームシステムを地域に合わせてカルチャライズするケースがある。「神撃のバハムート」では、韓国版リリースにあたって韓国向けのキャラクターを作成した。だが、「シャドウバース」のスタートダッシュはゲームのカルチャライズによって成功したわけではない。
「『シャドウバース』はカードバトルの戦略性を重視したゲームで、e-Sportsとしても展開しています。もし各国でシステムに差異を出すとゲーム体験が変わってしまい、国を超えた対戦ができなくなってしまう。ですから、ゲーム内ではなくゲーム外をカルチャライズしました」
先ほど紹介した事前登録キャンペーンも、“ゲーム外カルチャライズ”の1つだ。「シャドウバース」韓国版のリリース時には、事前登録の特典として抽選で旅行券を配った。また宣伝チャンネルも、韓国ではNAVERが運営する掲示板サイト「NAVER Cafe」、台湾ではFacebookでの告知にそれぞれ力を入れた。
「日本ではユーザーへの告知やコミュニケーションは、影響力の強いTwitterを中心にして行っています。ですが全世界的に見ると、Twitterがメインではない国の方が多い。一番ゲームユーザーが多いプラットフォームで情報発信をすることを心掛けました」
「そのキャラが人気!?」意外な広告クリエイティブ
広告クリエイティブも、国によって適した傾向がある。日本では2Dイラストで描かれた「きれい・かわいい」キャラクターが好まれるが、米国では3Dで3頭身にデフォルメした表現や、動物や筋肉を強調したムキムキ系のキャラクターの方がキャッチーだ。韓国は「カッコいい」キャラクターが人気で、台湾はキャラクターの露出の多さをアピールすることが好まれる。フランスはキャラクター以外の部分で、シンプルなデザインが受け入れられるという。
「誤解を招くようなクリエイティブにはならないように気を付けながら、どうすればその地域で『シャドウバース』をうまく見せていくかを考えています。『このキャラをアピールした方がいいの!?』と驚くことが何度もありました」
日本の広告では、レアリティの高い「レジェンド」カードのキャラクターにフォーカスしている。しかし各国のプロモーションでは、意外なキャラクターを押し出すことも。韓国では大人っぽい女吸血鬼の「スウィートヴァンパイア」、フランスでは忍者のような衣装を着た女性キャラ「アサシン」がプロモーションに利用された。どちらもゲーム内でのレアリティは高くない。
「このように、国によって採用するキャラクターを変えることができるのは、『シャドウバース』のカードとキャラクターが豊富だから。『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』なども含めて、Cygamesがこれまで作り上げてきたIP資産をうまく活用できていると思います」
「シャドウバース」において、海外のユーザー構成や売り上げは伸びつつある。簡体字版(中国版)のリリースも控えており、さらなる海外ユーザーの獲得を狙うとともに、大会などのオフラインイベントも海外で展開し、既存ユーザーのモチベーションを上げていくという。また、「シャドウバース」で培ったノウハウを既存タイトルや新規タイトルにも横展開していく考えだ。
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