ジャガイモ農家「補助金」の裏に、きたるべき“戦争”への布石:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
農林水産省が今年春の「ポテチ品薄騒動」を踏まえて、加工用ジャガイモを生産する農家に補助金を出すというニュースが流れた。差し迫った危機があるわけでもないのに、なぜ補助金を出すのか。筆者の窪田氏は「『戦争』に備えてのことではないか」という。どういう意味かというと……。
ポテチもまったく同じ構造である
そんなの考えすぎだろと思う人もいるかもしれないが、相手国のホニャララ不足を逆手にとって、自国の輸入品の規制をこじ開けて、市場を侵略していくというのは、米国のお家芸というか、もっとも得意とする戦い方だ。
例えば、6月に中国が14年ぶりに米国産牛肉の輸入を解禁した。
中国は2003年の牛海綿状脳症(BSE)発生から、米国産牛肉の輸入を禁止してきた。それがなぜこうもあっさりと撤廃したのか。米中が貿易不均衡是正に向けた「100日計画」を協議するなかで、その最初の成果として牛肉の輸入再開が正式決定したというのが表向きの話だが、実はこの背景には、中国国内世論で「牛肉不足」が叫ばれていることも無関係ではない。
日本の高度経済成長期と同じで、中国でも急激に人々の生活が欧米化しており、動物性たんぱく質の供給が間に合わず、近く牛肉不足に陥るのではないかという危機論が近年ささやかれている。もちろん、中国国内にも生産者がいるが、急速な工業化によってすさまじい勢いで農地が食いつぶされており、あの膨大な人口を食べさせるだけの供給力を失っている、というのはさまざまな専門家が指摘している。
実はポテチもまったく同じ構造である。
ばれいしょ農家は全体的に高齢化していて、後継者不足などで、このままでは供給が間に合わない。農家の数が減れば価格も高騰していく。国内の人口も減少していくので、ポテチの消費も減るからいいじゃんというむきもあるが、スナック菓子は価格がキモである。国産原料を維持するために値上げを迫られるようになれば、今は「日本産じゃがいも100%使用」を高らかにうたうメーカーもどこかのタイミングで方針転換を余儀なくされる。
そんな時、貿易不均衡をちらつかせて、米国産の生鮮ポテトの輸入解禁を迫られたら、果たして日本はそれを突き返すことができるのか。
関連記事
- 「ウィルキンソン」がバカ売れしている本当の理由
「ウィルキンソン」が売れている。躍進のきっかけはハイボールブーム。割り材としての需要が増えたことでブランド認知が上がったそうだが、大事な要素が欠けているのではないだろうか。どういうことかというと……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 次に、炎上するブラック企業は「マスコミ」だ
「ブラック企業」問題がさまざまな業界で起きているが、いよいよ政治の世界にも広がってきた。豊田議員が秘書に対し、「このハゲー!」と暴言を吐いたことで大きな問題になったわけだが、次のブラック企業はどこか。筆者の窪田氏は「マスコミ」と予想する。その理由は……。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.