AI時代の職業選びの難しさ:未来の働き方(1/2 ページ)
AIによる代替が進むこれからの時代、人手不足だからといって安泰な職業はごく少ない。よほど先を見て選ばないといけないと分かっていても現実的には難しい。いっそ特定の「職業」ではなく、将来求められる能力を開発できるか否かといった側面に視点を置いたほうがよいのかもしれない。
大学生にとっての職業選択と、企業にとっての新規事業の企画・開発はよく似ている。
自分(自社)にとっての得意なことや志向性と、世の中で求められるものがきれいに合致することは理想だ。しかし現実には、思い入れが強くとも競争が激しいなどの事情で、妥協・割り切りを余儀なくされながら紆余曲折した揚げ句、当初思ってもみなかった形に結実することもごく普通だ。
何より悩ましいのが、10〜20年先の世の中での需要を見通すことなど誰にもできないという当たり前の事実だ。
企業の新規事業開発の場合、想定していた通りに市場が立ち上がらなければ、随時軌道修正して別市場にシフトすることができるし、そうした柔軟性・機動性こそがマネジャーの腕の見せ所だ。実際のところ、新規事業開発で視野に入れるのは(産業により大きな差があるが)最長ケースでも10年、通常なら5年程度に短縮されつつある。
しかし5年程度で転職しようと思って就職する就活生は非常にまれだろう。せめて10年、できれば30年ほどは安泰であってくれと願うのが人情だ。
ところが就活生(およびその親御さんたち)にとっては盤石に思えた就職先が、経営陣の間違いによって大きく傾くといった事態がまれではなくなってきている(東芝やタカタといった最近の事例を思い出してほしい)。
企業に就職する場合だけでなく、特定の職業を目指して大学を選ぶ段階から「将来に向けての目利き」が求められることも多いが、なおさら難しいものだ。その分、若者とその親御さんの判断は保守的になりがちだ。しかし従来型の職業観に凝り固まっていると、かえってリスクを背負い込むことになるのがこれからのAI時代の怖さである。
「こうした先を見通せない時代だからこそ国家資格を身につけよ」とはよく言われるセリフだが、弁護士や会計士といったサムライ業の専門職こそが次なるAIによる代替のターゲットだと指摘されている(ただしAIに直接代替されようとしているのは下調べをする若手である)上に、今でも供給過多気味だとさえ言われている。
そしてもっとショッキングなことに、公務員を含むホワイトカラーの仕事の半分はAIによる代替が可能であると言われる。かといってブルーカラーのうち単純労働の要素が強いものはロボットか途上国の労働者に代替され得るし、報酬が低い事情も大して変わらないだろう。
結局、AI時代に求められるのは、AIを使いこなして社会に貢献する「新しい仕事パターン」を確立する人たちである。その半分程度は今ある職業かもしれないが、残り半分は現時点で全く存在しないものかもしれない。
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