なぜあの人が? 採用活動に駆り出される社員の共通点:常見陽平のサラリーマン研究所(2/2 ページ)
会社の採用ページ、就職ナビ、会社説明会、面接、内定者懇親会などに駆り出される社員はどのようにして決まるのか。人選の基準は、単に優秀かどうかだけではない。選ばれる人の共通点とは……。
「優秀さ」ではなく「見栄え」
この手の企画で、実際の成果を伴っているかどうかは別として、実力以上に評価されて登場してしまうのが、新規事業関係者、グローバルビジネス関係者である。学生にとって引きが強いというだけではない。企業活動の広がりを感じさせるために、この手の人たちは便利なのだ。いかにも新しいことにチャレンジしている風にアピールできるからである。
もっとも、これは、社内から反発を呼んでしまうこともある。なんせ、企業の稼ぎ頭は本業なのだ。新規事業は、いつ数字で貢献できるか分からない。グローバルビジネスは伸びているとは言えるが、多くの企業はまだまだ国内の本業が稼ぎ頭である。故に、「なんでお前らが採用活動で目立っているのだ」というクレームを受けやすいのだ。
この採用活動関連の露出というのは、呼ばれた当人にとってはなんだかんだいって、光栄なものである。ある意味、これは社内のモチベーションアップ策とも言える。一方、あまりにも盛った露出になると、社内で足を引っ張られてしまうのだ。「なんだあいつは。本当に利益に貢献しているのか」と。
やや余談だが、私が企業で人事をしていたとき、現場の社員からよく文句を言われたことがあった。それは「おまえら人事は、ウチの会社のことを美化しすぎじゃないか」というものだ。その後、人材コンサルをするようになり、さらには物書きとしてもさまざまな企業の人事部と関わったが、皆、同じような悩みを抱えていた。要するに現場に嫌われているのだ。
もっとも、この問題は、多角的に見なくてはならない。確かに、現場のことを全く理解せず、しかも社員の気持ちなど考えず盛りに盛っている人事担当者もいる。このような採用活動をすると、入社後のミスマッチが問題となる。本人も現場も戸惑うだろう。
しかし、企業というものは常に進化して行くものである。採用においては、今の現場にマッチしすぎるのもまた問題なのである。あえて、今の段階では扱いにくい人を採ることによって組織を変えようとすることもある。合わなくとも、化学反応が起こるのだ。悪いことではない。
ということで、採用活動に呼ばれる人は別に優秀だとは限らない。要するに採りたい学生にとって見栄えが良いかどうかという問題だ。
あぁ、人事の仕事、楽しかったが辛かったなあ。いろいろ、思い出してしまった。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
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