大企業のノルマが、「不正の温床」になる本質的な理由:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
日本企業の不正が次々にバレている。日産の無資格者検査、神戸製鋼のデータ改ざん、商工中金の不正融資など。なぜ同時多発的に問題が起きているのかというと……。
「ノルマ」と「不正」は双子の兄弟
そう聞くと、「いやいや、数値目標なんてあって当たり前だ。もっと厳しいノルマを課せられても不正に走っていない企業も多くあるぞ」という反論があるだろうが、ぶっちゃけて言ってしまうと、それは「たまたま」である。
たまたま今はノルマを達成できているとか、たまたま不正に走らねばならぬほど追い詰められていないというだけで、ちょっと条件が変わればいつ日産や神戸製鋼になってもおかしくはないのだ。
なぜかというと、それがノルマの本質だからだ。多くの人が勘違いをしているが、ノルマと不正は双子の兄弟、あるいは合わせ鏡のような存在なのだ。
そのあたりをご理解していただくには、まずはノルマという言葉に対する誤解を解く必要がある。
多くの人がノルマのことを「数値目標」のようなものだと思っているが、そうではなく正確には「個人や工場に割り当てられた労働基準量」を意味する。つまり、個々の能力や環境を考慮して設定された目標などではなく、組織が達成する全体目標から逆算して、その構成員らに問答無用で割り当てられる「労役」なのだ。
例えるのなら、「数値目標」は、病気になった友人の手術代をどうにか捻出しようとクラスのなかの有志が呼びかけて募る「カンパ」のようなもので、これに対して「ノルマ」は、ボスから金集めを命じられた不良少年が気の弱い子を脅して、何枚も売りつける「パー券」のようなものだ。
なぜこのような違いがあるのかというと、ノルマという言葉のルーツに関係している。実はこれは英語でもフランス語でドイツ語でもない。ロシア語である。
そう聞くと勘のいい方はお気付きだろうが、この概念は、旧ソ連の「計画経済」という考え方とともに世界に普及した。「5カ年計画」なんて言葉があったように、「計画経済」とは読んで字のごとし、長期的な計画をたてて、その計画どおりに経済成長を果たしていくという考え方である。要するに、ノルマ主義とは計画経済主義なのだ。
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