コクヨ、360度揺れる椅子「ing」発売 その仕組みは:日本人は“座り過ぎ”
コクヨが座面が360度揺れるオフィスチェア「ing」を発売。「座り過ぎ」の日本のビジネスパーソンの働き方を変える。
コクヨは11月7日、座面が360度揺れるオフィスチェア「ing」を発売する。コンセプトは「座るを解放する」で、“座り過ぎ”のビジネスパーソンの健康問題の改善や知的創造性の向上が図れるという。初年度の販売目標は15億円。
コクヨによると、日本のビジネスパーソンが座っている時間は1日に420分(7時間)と先進国で最も長く、「働く=座る」になっているという。長時間の着座は肩こりや運動不足などの健康問題につながるだけではなく、身体が動かさないことで知的創造性が落ちるといった影響もあるという。
働き方改革に注力するコクヨは、これまでもスタンディングデスクや上下昇降する会議デスクなどを発売し、「座らないで働く」という方面から長時間着座問題の解消を図ってきた。しかし「ing」は、「座りながら長時間着座の問題を解決する」という新しい提案だ。
コクヨの黒田英邦社長は「長時間着座の問題の本質は、ずっと同じ姿勢を取り続けていること。姿勢の固定化が心身への負担につながっている。コクヨは『オフィスチェアに新しいカテゴリーを作りたい』という思いのもと、約3年間かけてingを開発した」と語る。
ingのポイントは、座面の下に組み込まれたメカニズム。前後左右360度に動き、座っている人の動きや姿勢に合わせて座面を調整する。例えばデスクワークでノートPCを使っていると体は自然に前傾姿勢になるが、その重心の移動に合わせて椅子も傾く――という仕組み。アイデアを椅子を揺らしながら考えたり、積極的に腰を動かしてリフレッシュするといった使い方もできる。
開発を担当したコクヨの木下洋二郎さんは「今までの椅子は、姿勢を安定化させるものだが、ingは姿勢を活性化させるもの。安定したバランスボールの上に座っているような感覚や、椅子と1つになったような感覚を与える」と説明する。コクヨの調査では、ingに座ることで、肩や腰の筋肉が活発に動き、4時間で約1.5キロ分歩いているのと同じような運動効果があり、有効なビジネスアイデアの発想数も15%向上したという。
実際に座ってみると、座面の移動は想像以上にスムーズ。ちょっとした重心移動に椅子がついてくる感覚がある。特に前傾姿勢は意識せずとも自然に座面が傾いていて、PC作業の身体への負荷が減りそうだと感じた。腰を大きく動かす椅子を使ったリフレッシュなどは心理的に少しハードルの高さを感じたが、社全体で導入できればそうした動きが一般的になるかもしれない。
ingを活用した働き方改革の実験として、東京・渋谷で11月7〜15日に開催するイベント「DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA(DDSS)」に協賛し、サテライト会場のコインスペースに導入する。また、渋谷ヒカリエでコクヨが展開するコワーキングスペース「MOV」のほか、JINS運営のコワーキングスペースにもingを導入し、ビジネスパーソンに向けて「座りながら働き方改革」の選択肢を提示する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
オフィスに新視点 “価値観”を生かすコクヨの提案
働き方とオフィス環境を研究する、コクヨの「ワークスタイル研究所」。働く人の価値観を診断してオフィスづくりに生かすツール「#workTag」を開発した。所長の若原強氏に研究所の取り組みやオフィス環境の変化について聞いた。
失敗しない社内カフェへ 実体験から生まれた提案
オフィス家具メーカーのプラスが提案しているカフェスペース「5 TSUBO CAFE」。その提案が生まれた背景には、失敗を重ねながらオフィス改革とコミュニケーション活性化に取り組んだ自社の経験があった。
ヤフー“誰でも使える”スペースの効果
働き方改革に積極的に取り組んでいるヤフー。10月1日に移転した新オフィスの“目玉”の1つが、社外の人間も自由に入れるコワーキングスペース「LODGE(ロッジ)」だ。営業がスタートしてから約1カ月半。LODGEはヤフー社内にどのような効果をもたらしているのだろうか。
16年のトレンドは“働きやすく、おいしい”オフィス
働きやすくするためのサービスや技術は進歩している。その進化が一堂に会する「第11回 総務・人事・経理ワールド2016」のレポをお届けする。
なぜシリコンバレーの会社は快適なオフィスを作るのか?
アップルやグーグルなど先進的なグローバル企業は、イノベーション創出につなげていくためのオフィス戦略を既に推進している。一方、日本企業では、まだまだこうした考え方が根付いていないのが実態であるという。


