中国メディアが指摘する「日本は改ざん文化」は本当か:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
中国の新華社通信が「改ざん文化が恥の文化を超える」といった内容の記事を掲載した。そう聞くと、「粗悪な製品をつくっている中国にだけは言われたくない!」と思われたかもしれないが、かなり痛いところを突かれているのではないだろうか。どういうことかというと……。
日本企業が冒されている「世界一病」
では、なぜこのようなあまり褒められないことが、日本の立派なものづくり企業のなかに「文化」として定着してしまったのかというと、2つの大きな要素があると考えている。
ひとつには先週この連載で指摘した「ノルマ」だ(関連記事)。この旧ソ連から持ち込まれた概念が戦前・戦中にかけて日本社会に急速に浸透したことで、日本の労働者は、すべて当初のシナリオどおりに遂行することがなによりも優先する「計画経済」を叩き込まれた。
「計画経済」においてノルマを達成できないことは、なによりも許されないことなので、達成できないくらいなら「改ざん」でもなんでもして乗り切ろうとする。これは神戸製鋼だけではなく、ソ連崩壊後のロシア企業でもよく見られた現象だ。
そして、もうひとつの要素が「世界一病」である。
「ものづくり企業」だけにとどまらず、日本社会は自分で「世界一」をうたうケースが多い。第三者が客観的にそのような評価をして、「いやいや、まだまだですよ」と謙遜をしているくらいならいいが、日本の場合は手前みそを通り過ぎて「自画自賛」になってしまう。これは非常に危うい。「世界一」という結果ありきで、都合のいいように物事を恣意(しい)的に解釈する「暴走」が始まるのだ。
このあたりは拙著『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)にて、さまざまな「自画自賛本」や「自画自賛番組」を例にして分析をしているので、興味のある方はぜひ手にとっていただきたいのだが、そんな「暴走」の代表的なケースが「改ざん」である。自慢話で語っている「理想像」と「現実」の間に食い違いが生じると、人はどうにかそのギャップを埋めようとして話を盛ったり、捏造(ねつぞう)したりする。つまり「改ざん」に走りがちなのだ。神戸製鋼もその傾向がみられる。
例えば、シェア世界一のエンジン用弁バネ材をはじめ、第三者から「世界一」と評されるような技術・製品が多くある神戸製鋼は自社Webサイトで以下のように「自画自賛」している。
『実は世界一・日本一を誇るものがいくつもある、KOBELCOの技術・製品』(神戸製鋼所の公式Webサイトより)
また、同社の歴史を振り返ると、これまで30年以上にも及んで経営陣が「世界一」をうたってきているのだ。このような身の丈に合わぬ「自画自賛」が、「改ざん文化」をもたらした、というのは容易に想像できる。
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