「新卒の8割が辞めていく」 そんな企業を激変させた“新しい組織の形”(1/3 ページ)
5年前まで、新卒採用者の8割が辞めてしまうという悲惨な状態だったネットプロテクションズ。しかし地道な改革の結果、今では新卒がほとんど辞めなくなったばかりか、若手が大活躍しているという。いったい何が起こったのか。
5年前まで、新卒採用者の8割が辞めてしまうという、“組織としてはボロボロの状態”だったネットプロテクションズ。しかし地道な改革の結果、今では新卒がほとんど辞めない会社になったばかりか、若手が目覚ましい成長を遂げ、大活躍しているという。
同社が変わったのは、組織の形を上意下達のヒエラルキー型から上下関係のないフラットなホラクラシー型へと移行したことが大きい。それがイマドキの優秀な若者を引き寄せ、その力を引き出す会社へと変わる原動力となったわけだが、長年、組織の在り方としてスタンダードだった形を変えるにはさまざまな苦労があったはずだ。
ネットプロテクションズは、どうやってホラクラシー型組織を実現させたのか――。10年以上にわたる戦いの道のりを、同社代表取締役社長の柴田紳氏に聞いた。
なぜ、入社間もない若手が“経営視点”を持てるのか
2000年創業のネットプロテクションズは、ネット通販における「コンビニ後払い」の仕組みを日本で初めて実現した企業。今や2万店超が導入する、後払い決済市場でシェアNo.1のサービス「NP後払い」を手掛けている。
組織運営の方法は、かなり独特だ。CEOやCTO、各職種のマネジャーといったリーダーのポジションはあるものの、役職者の権限は限りなく少なく、むしろチームのメンバーがやりたいことをサポートするのが主な役割。極端な例を挙げると、入社後の配属や異動も、個人の希望で実現するといった具合だ。
社員それぞれの「やりたいこと」を尊重し、「本業に専念」できるようにするため、正社員の担う業務を企画やマネジメントに特化しているのも特長の1つ。セールス、カスタマーサービスなどのオペレーション、システム開発・保守などはアウトソーシングしたり、派遣社員やパートタイム社員に担ってもらう形をとっている。約100人の正社員に対し、同じくらいの数の派遣社員やパート社員がいるのはそのためだ。
一方、正社員はメインの担当業務をもちながら、各自が20%の時間を会社づくりに必要なことを考え、制度化を検討する「ワーキンググループ」の活動に充てている。新卒採用から風土の浸透と活性化、ナレッジマネジメント、予算策定、メンター制度まで、“みんなで会社をつくる”というビジョンに基づいたワーキンググループが幾つも立ち上がっており、どのワーキンググループに参加するかも、本人の希望で決まる。そのため、新卒1年目の若手が予算策定や新卒採用に深く関わることも珍しくない。
「この活動に関わることで、“会社全体を見渡す経営者目線”が養われるとともに、どんな仕事も自分事として捉えられるようになるんです」(柴田氏)
ネットプロテクションズにはほかにも、社員が会社全体の仕組みを知るためのさまざまな仕掛けが用意されている。
新卒が本配属前に別の部署に「出向」して業務を学んだり、先輩社員全員が、新人1人につき数人の「メンターグループ」を作って所属部署とは異なる人間関係を作るための支援をしたり、といった取り組みはその一例だ。その結果、新卒で入社した社員は4〜5年目にもなると、「他社の人材と比べても、かなり高いレベルに育つ」と柴田氏は胸を張る。
「会社全体を俯瞰しながら、自分のやるべきこととその適切な方法論を考え、そのために必要な人を巻き込んでいく――。そんなリーダーとしての素質が、若くして身につくんです」
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