「地方は不利」――そんな常識を覆す手段はあるのだ:地域活性化伝道師が語る(4/4 ページ)
2017年は地方創生政策がスタートして3年が経過。計画ではなく実績が問われるようになりました。従来のように人口だけでどうにか地方を保持しようとするのではなく、新たな地方の持続可能な仕組みを考えるというテーマに地方創生はシフトしていくはずです。そうした中で地方は何をすべきでしょうか。
そのほかにも、シェアリングエコノミーといったインターネットを活用したマッチングサービスを適切に用いれば、使わない空き部屋を民泊に活用したり、町の空きビルを簡易宿泊業態に転換したりして、観光振興にプラスにつなげることもできます。過疎地など従来のバス路線などでは交通網を整備・維持できなかった範囲までをマッチングシステムを活用して効率的にカバーしようとする試みも、Uberと提携した京都府京丹後市、相乗りサービスのnottecoと提携した北海道天塩町など各地で始まっています。
さらに、従来よりも効率的なインフラ技術活用によって全国一律かつ、自治体単位でやってきた昭和のころから変わらない電話やFAX、窓口、専用の公共施設などでの非効率な公共サービスを変える可能性を秘めています。自治体単位でやっていた業務を広域で統合し、重複投資をなくし、互いに効率を追求した結果、人口減少でも負担増加を軽減した岩手県北上市、花巻市、紫波町の水道企業団なども出てきています。
人手だけに依存しない新たな「稼ぐ産業」構造という攻めと、効率的な「公共サービス」という守りの両面を実現することで、地方に新たな活路が見出されていきます。
もちろん新技術を採用したり、元々のやり方を変えたりすることに消極的な地方部が多いのも実態ですが、逆に言えばそれは人口減少で滅ぶのではなく、人口が少なくても発展する方法を選択しなかったからこそ滅んでしまうと言えます。状況に応じて新たな技術を使い、従来のやり方を変える地域が生き残っていくのは、かつて人口急増に対応した都市部がそうであったように、人口減少に対応する地方部に課せられた構造的な課題です。都市の真似をしても発展はしないのです。
地方創生とは、新たな技術によって従来の価値観、常識では不利とされた立地環境を転換することであると考えられます。
従来では不可能とされたことが可能になる新技術が次々と登場する今だからこそ、地方には多様なチャンスがあります。従来の技術では「不利な地方」であった構造を、予算の力ではなく、新技術によって変革する試みこそ、地方創生の本質です。
著者プロフィール
木下 斉(きのした ひとし)
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事、内閣府地域活性化伝道師。
1982年東京生まれ。早稲田大学高等学院在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。早稲田大 学政治経済学部政治学科卒業後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学。08年、熊本城東マネジメント 株式会社設立、09年一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。全国各地での事業型まちづくり会社への投資、事業開発を推進し、そのプロセスを解析して各種メディアに発信している。内閣府地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。近著に「地方創生大全」(東洋経済新報社)、「稼ぐまちが地方を変える」(NHK 新書)、「まちで闘う方法論」(学芸出版)、「まちづくりの経営力養成講座」(学陽書房)がある。
関連記事
- 24時間営業縮小から思う「地方創生」の真実
早朝深夜営業における人手不足などによって24時間営業の小売店や外食チェーンなどが減少している。そうした社会情勢と地方のつながりについて考えてみたい。 - 世界が注目する東北の小さな町のイチゴ革命
東日本大震災によって大きな被害があった宮城県山元町。この地で作られているイチゴが今、国内外から注目を集めている。「ミガキイチゴ」という商品ブランドを立ち上げた岩佐大輝さんの挑戦に迫る。 - 成長可能性都市ランク、1位は福岡市、2位は……?
野村総合研究所は国内100都市を対象にした「成長可能性都市ランキング」を発表した。 - 佐藤可士和氏が語る、地方発ブランドの成功条件とは?
今治のタオル産業の復活を目指し、2006年にスタートした「今治タオルプロジェクト」。そのブランディングにかかわるクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏に、地方発ブランドが成功するための条件などを聞いた。 - 地方が稼ぐために、何を強みにすればいいのか?
地方創生フォーラム「まちてん2017」が開催。その特別セッションで一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の名和高司教授が「地方が稼ぐ力」について考えを語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.