宇都宮LRTの目玉は何か、不安は何か:2022年に開業(2/4 ページ)
宇都宮市と芳賀町が計画しているLRT事業が、2022年に開業する。軽鉄道(路面電車など)が走行すれば、街はどのように変化するのだろうか。宇都宮市の吉田信博副市長に話を聞いた。
宇都宮LRTの目玉は2つ
まず、宇都宮LRTの概要を紹介する。路線はJR宇都宮駅東口から東へ延びていて、鬼怒川を越えて、ホンダ、キヤノン、カルビーなど大企業の工場などが建ち並ぶ工業団地まで結ぶ。宇都宮市の隣にある芳賀町にわたって約18キロ、車両が走行する予定だ。
運営は「上下分離方式」を採用。営業の主体は、民間会社の宇都宮ライトレールが担当して、整備の主体は宇都宮市と芳賀町。両自治体は車両を貸し付け、宇都宮ライトレールは施設使用料を支払うといった形だ。事業費は約458億円(税別)。
LRTの最高時速は40キロで、所要時間(起終点間)は快速で37〜38分。運転時間は午前6時台から午後11時台で、運行間隔はピーク時が6分間隔、オフピーク時は10分間隔を予定している。運賃は、初乗り150〜400円。ちなみに、バスでJR宇都宮駅から本田技術研究所まで乗った場合、料金は790円、所要時間は1時間12分。LRTの場合、料金は400円、所要時間は44分を想定している。宇都宮LRTが完成すれば、料金はほぼ半額、時間も30分ほど短縮することができる。
宇都宮市の中心街にはたくさんのバスが走行している。通勤・通学の足として多くの市民が利用しているわけだが、いまだ交通ICカードが導入されていない。定期や回数券を持っていなければ、乗車するたびに財布から小銭を出して……といった面倒な作業を強いられているのだ。だが、宇都宮LRTの完成時には、市内の公共交通機関に交通ICカードを導入して、利用者はLRTからバスに乗り換えるときにもスムーズに乗ることができるようになる。
路線の目玉は2つある。1つは、工業団地への通勤環境を改善すること。工業団地で働いているのは3万人ほどいて、通勤に自家用車を使う人が多い。もちろん、バスを利用する人もいるが、平日の朝は交通渋滞が慢性化している。このような話を聞くと、「じゃあ、LRTを走らせると、渋滞は悪化するのでは?」と思われたかもしれない。
この疑問に対し、宇都宮市の担当者は「LRTが走行する道路は拡幅するほか、既存の道路とは別に専用の軌道も建設する予定なので、渋滞は悪化しないのでは。現在、通勤でクルマを使っている人がLRTに乗っていただければ、渋滞は改善するはず」と回答した。
もう1つの目玉は、トランジットセンターの建設である(5カ所を予定)。トランジットセンターとは乗り換え施設のことで、駅の近くにバスの停留所やクルマの駐車場、自転車の駐輪所を設けることで、LRTに乗り換えができるようにする。拠点間をさまざまな交通手段でつないでいく考えだが、それだけではない。「トランジットセンターの近くに商業施設や介護施設、子どもの保育施設などを誘致して、便利な街にしていきたい」(吉田さん)といった構想を描く。
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